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【2024(令和6)年税制改正】法人関係税制の改正について解説

与党である自民党より2024(令和6)年度税制改正大綱が公表されました。同大綱では「賃金上昇は、コストでなく、投資である成長の原動力」と位置付けし、賃上げ促進や国内投資促進について重点的な措置が設けられています。今回は、法人に関する税制の改正について解説します。

 

1.賃上げ促進税制の改正

物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めるため、賃上げ促進税制が強化され、3年間延長されます。

 

改正のポイント

・従来の大企業のうち、常時使用従業員数2,000人超の大企業については、現行の賃上げ率(継続雇用者の給与等支給額の3%以上増加)の要件は維持しつつ、原則の控除率が10%(現行15%)に引き下げられる一方、賃上げ率等に応じた上乗せ措置により、最大の控除率が35%(現行30%)へ拡大されます。

・従来の大企業のうち、常時使用従業員数2,000人以下の企業を新たに「中堅企業」と位置付け、従来の賃上げ率の要件を維持しつつ、最大の控除率が45%の中堅企業向け賃上げ促進税制が創設されます。

・中小企業については、従来の賃上げ要件・賃上げ率に応じた控除率を維持しつつ、新たに繰越控除制度が創設されます。繰越控除する年度は、全雇用者の給与等支給額が対前年度から増加していることが要件とされます。

・各制度において、子育てと仕事の両立支援や女性活躍の推進に積極的に取り組む企業に対する上乗せ措置が設けられます。

 

2.交際費等の損金不算入制度の見直し

中小企業の経済活動の活性化や、「安いニッポン」の指摘に象徴される飲食料費に係るデフレマインドを払拭する観点から、交際費の損金不算入制度の見直しが行われます。

 

改正のポイント

・接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が3年間延長されます。

・損金算入可能な社外飲食費の上限額が1人あたり5,000円以下から10,000円以下に引き上げられます。

 

3.外形標準課税の対象法人の見直し

減資による外形標準課税逃れを防ぐため等を目的として外形標準課税の対象法人の見直しが行われます。

 

改正のポイント

現行の資本金1億円超の法人に加えて、次の法人が外形標準課税の対象法人となります。

①前事業年度に外形標準課税の対象であった法人で、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10 億円を超えるもの(減資への対応)

②資本金と資本剰余金の合計額が50 億円超の法人等の100%子法人等のうち、資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるもの(100%子法人等への対応)

 

①は2025(令和7)年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。

②は2026(令和8)年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。激変緩和措置あり

 

4.中小企業事業再編投資損失準備金の拡充・延長

成長意欲のある中堅・中小企業が、複数の中小企業をグループ化して経営資源を集約するとともに、親会社の強みを活かすことで、グループ一体となって飛躍的な成長を遂げることができるよう、中小企業事業再編投資損失準備金制度が拡充されます。

 

中小企業事業再編投資損失準備金制度とは?

一定の要件に基づく経営力向上計画の認定を受けM&Aを実施した際、M&A実施後に発生し得るリスクに備えるため、株式取得価額の70%以下の金額を準備金として積み立てた際、積立額を損金算入できる制度(現行)。

 

改正のポイント

・現行の制度は一定の表明保証契約を締結している場合は適用しないなどの見直しがされた上で、3年間延長されます。

・現行の制度に加えて、産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けM&Aを実施した際、株式取得価額の最大100%を準備金として積み立てし、積立額を損金算入ができる措置が設けられます。据置期間は現行の5年から10年に延長されます。

 

5.イノベーションボックス税制の創設

我が国における研究開発拠点としての立地競争力を強化し、民間による無形資産投資を後押しすることを目的として、国内で研究開発の成果として生まれた知的財産から生じる所得に対して優遇するイノベーションボックス税制が創設されます。

 

改正のポイント

企業が国内で自ら研究開発を行った特許権またはAI分野のソフトウェアに係る著作権について、当該知的財産の国内への譲渡所得または国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%の所得控除を認める制度が設けられます。

 

6.その他の主な改正

①中小企業倒産防止共済の掛金の損金算入の特例の改正

中小企業倒産防止共済の共済契約を解除し、再び共済契約を締結した場合、解除の日から2年を経過する日までの間に支出する共済契約に係る掛金は、損金算入ができないこととなります。

この改正は、2024(令和6)年10月1日以後の共済契約の解除について適用されます。

 

②中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長

対象法人から常時使用従業員数300人超の電子申告義務化法人を除外した上で、適用期限が2026(令和8)年3月31日まで2年間延長されます。

 

③中小企業者等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置

不適用措置の対象から銀行等保有株式取得機構を除外した上で、適用期限が2026(令和8)年3月31日までの間に終了する事業年度まで2年間延長されます。

 

④譲渡制限等のある市場暗号資産の期末評価方法の見直し

一定の譲渡制限の市場暗号資産の期末評価方法に「原価法」が選択できるようになります。

 

 

まとめ

2024(令和6)年税制改正のうち、法人に関する改正について解説しました。賃上げ促進税制や交際費等の損金不算入制度など多くの企業に関係する税制の改正も行われますので、経理に携わる方は理解しておきましょう。

 

2023年(令和5年)度税制改正 電子帳簿保存制度関係の改正を解説

2023年(令和5年)度税制改正で、電子帳簿保存制度関係では、優良な電子帳簿の対象帳簿の範囲の合理化・明確化、スキャナ保存制度の要件の緩和、電子取引データの保存制度の猶予措置の創設の3つの改正が行われています。今回は、電子帳簿保存制度関係の改正について解説します。

 

優良な電子帳簿の対象帳簿の範囲の合理化・明確化

会計ソフトを使うなどして自身で最初から一貫してパソコンで作成している帳簿や書類で、モニターや説明書等を備え付けるなどの要件を満たしているときは、印刷せずに電子データのまま保存することができます(電子帳簿保存)。

さらに、その帳簿が「優良な電子帳簿」の要件を満たしている場合で、事前に税務署への届出をしているときは、税務調査等で、その電子帳簿に関連する過少申告が判明した場合の過少申告加算税が5%軽減されるという特典が設けられています。

「優良な電子帳簿」は、「モニター・説明書等を備え付ける」などの電子帳簿として保存するための要件に加えて、① 訂正削除履歴の保存、 ② 帳簿間の相互関連性 ③ 日付・金額・相手方による検索機能、という3つの要件を満たしている必要があります。

 

この優良な電子帳簿の対象帳簿の範囲の合理化・明確化が行われ、次のようになります。

改正前

改正後

・仕訳帳
・総勘定元帳
・その他必要な帳簿

・仕訳帳
・総勘定元帳
・その他必要な帳簿(下記の対象となる帳簿の具体例に記載のもの)


<対象となる帳簿の具体例>
・売上帳、仕入帳、経費帳(賃金台帳を除く。)、売掛帳、買掛帳
(注)所得税の場合は、賃金台帳も対象
・受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、有価証券受払い簿
・固定資産台帳、繰延資産台帳 等

この改正は2024年(令和6年)1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。

 

スキャナ保存制度の要件の緩和

スキャナ保存制度とは、紙で受領した書類や作成した帳簿をスキャンして、スキャンしたデータを保存する方法のことをいいます。この場合も要件が定められていますが、改正により次のような要件の緩和が行われます。

 

<改正の内容>

①記録事項の入力者等の情報を確認できるようにしておくことの要件が不要となります。
②スキャナの読み取り情報(解像度・階調・大きさ)の保存の要件が不要となります。
③帳簿との相互関連性を求める書類が重要書類(資金や物の移動に直結・連動する書類(契約書、領収書、請求書等))に限定されます。

 

改正前後のスキャナ保存制度の要件は次のようになります。

 

改正前

改正後

解像度・カラー・階調情報・大きさ情報の要件

タイプスタンプの付与

入力期間の制限

入力者等情報の確認

バージョン管理

帳簿との相互関連性の保持


(重要書類のみ)

見読可能装置・システム関係書類等の備付け/整然・明瞭出力

検索機能の確保

 

この改正は2024年(令和6年)1月1日以後に保存される国税関係書類から適用されます。

 

電子取引データの保存制度の猶予措置の創設

見積書、契約書、請求書などの書類をメールなどで電子データで受け取った場合には、電子取引データの保存の要件を満たした上で、保存しておくことが必要です(電子取引データ保存)。

 

電子取引データ保存の原則的なルール

電子取引データは、原則として、次の4つの要件を満たした上で保存する必要があります。

<電子取引データ保存の要件(原則)>

①タイムスタンプ付与、履歴が残るシステムでの授受・保存、改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守るなどの方法でデータ改ざん防止のための措置をとる。
②「⽇付・⾦額・取引先」で検索できるようにする。
③ディスプレイやプリンタを備え付け、いつでもデータを確認できる。
④システムのマニュアル、手順書などを備え付けている。

 

ただし、準備が間に合わない会社も多かったため、2022年(令和4年)税制改正で次のような宥恕措置(経過措置)が設けられました。

<2023年(令和5年)12月31日までの宥恕措置(経過措置)>

2023年(令和5)年 12 月 31 日までに⾏う、電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしておくことが認められる。

 

この宥恕措置により、2023年(令和5)年 12 月 31 日までは、事実上、データをプリントアウトして保存しておけば、特に問題ありませんでした。この宥恕措置は期限をもって廃止されますが、その代わりに次のような期間制限のない猶予措置が設けられることとなりました。

<2023年(令和5年度)税制改正で新設された猶予措置~2024年(令和6年)1月1日以後適用~>

次の3つの猶予措置の要件を満たす場合には、原則的な保存方法によらず、電子取引データの保存することが認められます。

①電子取引データ保存の要件(原則)で保存できないことについて相当の理由がある(事前手続は不要)
②税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じることができる
③税務調査等の際にプリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じることができる

 

さらに検索機能確保の要件を不要とする措置について次の改正が行われています。

従来から小規模事業者については電子取引データ保存の4つの要件のうち、税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じることができる場合には、検索機能確保の要件は不要とされています。

この対象となる検索機能確保の要件を不要とする措置の対象者が拡大されました。

改正前

基準期間(2課税年度前)の売上高が1,000 万円以下の事業者

改正後

次のいずれかの要件を満たす事業者

・基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000 万円以下の事業者

・電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日、取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている事業者

プリントアウトして、取引年月日、取引先ごとに整理している場合は、規模にかかわらず、検索要件確保の要件は不要となります。

 

まとめ

2023年(令和5年)度税制改正による電子帳簿保存制度関係の改正について解説しました。時に電子取引データ保存の経過措置の適用期限到来後はどうなるか気にされている方も多かったのではないでしょうか。猶予措置の創設によりプリントアウト+データの保存で対応することができるようになりました。これ措置を使えば対応しやすいのではないでしょうか。今後も電子帳簿保存制度については見直しが行われていくと思われますので、引き続き確認していく必要があるでしょう。

2023年(令和5年)度税制改正の全体像を知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

(関連記事)2023年(令和5年)度税制改正のポイント

2023年(令和5年)度税制改正のポイント

2023年3月28日、2023年(令和5年)度税制改正法案が成立しました。
今回は2023年(令和5年度)税制改正のポイントを解説します。

個人に関する税金

個人に関する税金は主に次のような改正が行われます。

少額投資非課税制度(NISA)の拡充・恒久化

・少額投資非課税制度(NISA)の非課税保有期間が無期限化され、口座開設可能期間の期限も撤廃され、NISA制度は恒久的な措置となります。

・「つみたて投資枠」は現行のつみたてNISAの年40万円から年120万円に拡充されます。

・現行の一般NISAに代えて「成長投資枠」が設けられ、「つみたて投資枠」との併用が可能となります。「成長投資枠」の年間投資上限額は、現行の一般NISAの年120万円から年240万円まで拡充されます。

・年間投資額とは別に、総額1,800万円(内、成長投資枠 1,200万円)の一生涯における非課税限度額が設けられます。

 

資産に関する税金

資産に関する税金は主に次のような改正が行われます。

相続時精算課税制度の改正

相続時精算課税制度の特別控除額2,500万円に、年110万円の基礎控除額が設けられることとなりました。これにより、相続時精算課税制度選択後も、年110万円まで課税されずに贈与を行うことが可能となります。2024年(令和6年)1月1日以後の贈与について適用されます。

相続開始前贈与の加算期間の改正

相続開始前贈与の加算期間が現行の3年間から7年間に延長されます。なお、延長された4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産から控除する措置が講じられます。
この改正は2024年(令和6年)1月1日以後の贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。

教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与 3年延長

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、節税的な利用が行われないように一定の見直しが行われた上で、適用期限が2026年(令和8年)3月31日まで3年間延長されます。

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、節税的な利用が行われないように一定の見直しが行われた上で、適用期限が2025年(令和7年)3月31日まで2年間延長されます。

 

法人に関する税金

法人に関する税金は主に次のような改正が行われます。

研究開発税制の改正

一般試験研究費の額に係る税額控除制度について、税額控除率や控除税額の上限について見直しが行われた上で、適用期限が2026年(令和8年)3月31日までに開始する事業年度mで3年延長されます。

また、特別試験研究費の対象となる試験研究費の額や試験研究費の範囲についての見直しが行われます。

この改正は2023年(令和5年)4月1日以後に開始する事業年度から適用となります。

 中小法人に対する法人税の軽減税率の特例の期限延長

 中小法人に対する法人税の軽減税率の特例(所得金額年800万円まで15%)の適用期限が2025年(令和7年)3月31日までに開始する事業年度まで2年間延長されます。

中小企業投資促進税制の期限延長

中小企業投資促進税制について、対象資産から、コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものを除外するなど一定の見直しが行われた上で、適用期限が2025年(令和7年)3月31日まで2年間延長されます。

暗号資産の評価方法等の改正

暗号資産の評価方法等について次の見直しが行われます。

①暗号資産の時価評価の対象から、自己が発行した暗号資産で発行の時から継続して保有しているものであること等一定の要件に該当する暗号資産が除外されます。

②自己が発行した暗号資産の取得価額は、発行に要した費用の額となります。

③法人が暗号資産交換業者以外の者から借り入れた暗号資産を譲渡した場合で、譲渡した日の属する事業年度終了の時までにその暗号資産と同じ種類の暗号資産の買戻しをしていないときは、買戻しをしたものとみなして譲渡損益を計算します。

これらの改正は2023年(令和5年)4月1日以後に開始する事業年度から適用となります。

 

インボイス制度に関する改正

インボイス制度に関しては、主に次のような見直しが行われています。

小規模事業者に係る納税額の負担軽減措置(2割特例)の創設

免税事業者がインボイス制度対応のためにインボイス発行事業者を選択した場合の負担軽減を図るため、3年間、負担軽減措置が設けられます。

一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)

基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間、税込価額が1万円未満の課税仕入れの場合は、一定事項を帳簿に記載することで仕入税額控除が認められることとなります。

インボイス制度の登録手続きの見直し

インボイス制度の登録手続きに関する期限、登録日について次のように改正が行われます。

 

改正前

改正後

免税事業者が課税期間の初日から登録を受けようとする場合の申請期限

当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日

当該課税期間の初日から起算して15日前の日

適格請求書発行事業者が翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合の申請期限

その提出があった課税期間の末日から起算して30日前の日の前日

当該翌課税期間の初日から起算して15 日前の日

登録に関する経過措置期間*中の登録日

登録完了日

提出する日から 15 日を経過する日以後の日で登録を希望した日

*2023年(令和5年)10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間

なお、これらの改正の趣旨等を踏まえて、2023年(令和5)年 10 月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないこととされます。

 

電子帳簿保存法制度の改正

電子帳簿保存制度に関しては、主に次のような見直しが行われています。

・電子取引データの保存制度に関して、現行の経過措置は2023年(令和5年)12月31日の適用期限をもって廃止された上で、2024年(令和6年)1月1日以降は、次の猶予措置が設けられます。

(猶予措置の内容)
相当の理由があると認める場合には、その電子取引データの出力書面の提示・提出の求め及びその電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、保存要件を不要として、電子取引データの保存が可能となります。

また、検索機能の確保の要件の緩和措置が設けられます。

・スキャナ保存制度について、入力者等の情報の確認要件、スキャナの読取情報(解像度・階調・大きさ)の保存要件は廃止されます。また、相互関連性の要件は重要書類に限定されます。

・優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象帳簿の範囲の合理化・明確化が行われます。

現行

仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿(全て)

改正後

仕訳帳、総勘定元帳、次に記載する対象帳簿

<対象帳簿>
・売上帳、仕入帳、経費帳(賃金台帳を除く。)、売掛帳、買掛帳(注)所得税の場合は、賃金台帳も対象となる。
・受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、有価証券受払い簿
・固定資産台帳、繰延資産台帳 等

電子帳簿保存制度関係の改正について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

(関連記事)2023年(令和5年)度税制改正 電子帳簿保存制度関係の改正を解説

 

その他の改正

無申告加算税の加重措置の創設

追徴税額(増差税額)が300万円を超える場合の無申告加算税の割合が20%から30%に引き上げられます。

また、前年度及び前々年度に無申告加算税または重加算税(無申告)を課される者が、更なる無申告行為を行った場合、無申告加算税または重加算税が10%加重されます。

これらの改正は、2024年(令和6年)1月1日以後に申告期限が到来する国税について適用されます。

 

まとめ

2023年(令和5年)度税制改正について解説しました。インボイス制度や電子帳簿保存制度の改正は多くの会社に共通して影響があるため、理解しておきましょう。

なお、今回の改正はありませんが、防衛力の強化に係る財源を確保するため、今後、法人税、所得税、たばこ税等について増税される方針が示されています。今後の動向についても注意していく必要があります。 

【2020年度税制改正】会社にかかわる税金の改正など

2020年度税制改正のうち、会社にかかわる税金の改正について解説します。

1.連結納税制度が見直しされ「グループ通算制度」に!

連結納税制度とは、企業グループを一体とみて親会社と100%子会社の所得通算等を行い、申告・納税をする制度をいいます。この連結納税制度について、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行い、グループ内で損益通算をする基本的な枠組みは維持しつつ、親会社、完全子会社のそれぞれが個別に法人税額等の計算及び申告を行う『グループ通算制度』に見直しされます。
2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用となります。

 

2.消費税の申告期限の1か月延長が可能になります

法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人は、事前に届出をすることにより、消費税の申告期限を1月延長することができるようになります。この改正は2021年3月決算の会社から適用することができます。なお、原則的な申告期限までに見込み納付をしない場合には利子税がかかります。

 

3.居住賃貸建物の仕入税額控除が不可になります

居住用賃貸建物を取得したときの仕入税額控除の適用が無くなります。

これにより、金地金の売買を繰り返すことで、消費税の課税売上割合を高め、居住用賃貸建物を取得したときに消費税の還付を受けるスキームが封じられることになりました。

ただし、取得後一定期間内に、譲渡した場合や住宅の貸付け以外の貸付けの用に供することとなった場合は、一部について仕入税額控除ができるような調整が行われます。

この改正は2020年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合(2020年3月31日までに契約を締結している場合を除く)に適用されます。

 

4.各種特例が延長されます

次のように特例の要件見直しと期限延長が行われました。

・中小法人の交際費課税の特例措置の延長
中小法人が交際費を年間800万円まで全額損金算入することができる交際費の特例が、2022年3月31日まで2年間延長されました。

ただし、対象法人から「資本金の額等が100億円超の法人」が除外されました。

・中小企業者等の少額減価償却資産の特例の延長

30万円未満の減価償却資産を年300万円まで即時償却することができる少額減価償却資産の特例が、2022年3月31日まで2年間延長されました。

ただし、対象法人から「連結納税適用事業者と従業員500人超の法人」が除外されました。

 

5.電子帳簿保存制度の見直しされます

電子帳簿保存制度とは、一定の要件を下に、原則として紙での保存が求められる帳簿書類等について、電子媒体での保存が認められるというものです。

電子帳簿保存をするには、改ざん防止のため、電子化したデータに受領者が、認証機関のタイムスタンプを付与することが要件とされています。

しかし、次の場合にはタイムスタンプの付与をしなくてもよいこととなりました。

①発行者側でタイムスタンプを付与している場合
②ユーザーが自由にデータ改変できないクラウドシステム等を使用している場合

この改正は2020年10月1日から適用となります。

まとめ

2020年度税制改正のうち、会社に関わるものについて解説しました。2020年度税制改正では、大きく増税や減税となるような制度の創設・改正はなく、会社に大きな影響を与えることはないでしょう。

ただし、連結納税制度の適用している場合は、グループ通算制度への制度改正のタイミングに合わせて、改めて移行した方が有利かどうかを検討することができます。

また、法人税等の申告期限の延長をしている場合は、消費税の申告期限の延長を利用することができるようになり、利便性が高まるでしょう。

 

 

 

解説「平成28年度税制改正大綱」法人に係る税金

 

平成27年12月16日に「平成28年度税制改正大綱」が公表されました。
そのうち、法人に係る主な改正内容を解説します。
なお、今後、国会審議の過程で内容が変更される可能性がありますので、ご注意ください。
1.法人実効税率の20%台への引下げ
現行32.11%の法人実効税率が、28年度からは29.97%、30年度からは29.74%に引下げられます。
2.減価償却制度の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物付属設備及び構築物、鉱業用の建物の償却の方法について、定率法が廃止されます。
3.法人事業税の税率引下げと外形標準課税の拡大
平成28年4月1日以後開始事業年度より資本金1億円超の法人事業税の外形標準(付加価値割・資本割)が拡大されます。
付加価値割              0.72%⇒1.2%
資本割          0.3%⇒0.5%
所得割(年400万円以下) 3.1%⇒1.9%
所得割(年800万円以下) 4.6%⇒2.7%
所得割(年800万円超)  6.0%⇒3.6%
4.欠損金の繰越控除制度の控除限度額の縮小
大法人の控除限度額が次のように改正されます。
平成28年度 所得金額の65%⇒60%
平成29年度 所得金額の60%⇒55%
また、繰越期間が10年となるのは、平成30年4月1日以後に延期されます。
5.地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
地域再生法の改正法の施行の日から平成32年3月31日までの間に地方創生推進寄付活用事業に関連する寄付金を支出した場合、法人税及び住民税から税額控除できる制度が創設されます。企業が寄付をした場合の、実質負担が最低で約40%程度で済むこととなります。
6.交際費の損金不算入制度の適用期限延長
飲食費に係る損金算入の特例と中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。
7.中小企業者等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限延長
中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までに開始する事業年度まで、中小企業者等以外の法人は、欠損金の繰戻し還付の適用ができないこととなります。
8.環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)の見直し
風力発電設備の即時償却の廃止など一定の見直しが行われた上で、環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までの間に取得した資産について適用することができます。
9.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限延長
中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例の適用期限が2年延長されます。ただし、常時使用する従業員数が1,000人を超える法人は除外となる。
10.中小企業者等の機械装置の償却資産税の特例の創設
中小企業者等が平成31年3月31日までの間に生産性向上設備のうち一定の機械装置を取得した場合、最初の3年間、課税標準に価格を1/2とする措置が創設される。

平成27年12月16日に「平成28年度税制改正大綱」が公表されました。
そのうち、法人に係る主な改正内容を解説します。

⇒個人に係る主な改正内容はこちら
⇒消費税関連の主な改正内容はこちら 

なお、今後、国会審議の過程で内容が変更される可能性がありますので、ご注意ください。

1.法人実効税率の20%台への引下げ

現行32.11%の法人実効税率が、28年度からは29.97%30年度からは29.74%に引下げられます。

2.減価償却制度の見直し

平成28年4月1日以後に取得する建物付属設備及び構築物、鉱業用の建物の償却の方法について、定率法が廃止されます。

3.法人事業税の税率引下げと外形標準課税の拡大

平成28年4月1日以後開始事業年度より資本金1億円超の法人事業税の外形標準(付加価値割・資本割)が拡大されます。

付加価値割              0.72%⇒1.2%
資本割             0.3%⇒0.5%
所得割(年400万円以下) 3.1%⇒1.9%
所得割(年800万円以下) 4.6%⇒2.7%
所得割(年800万円超)  6.0%⇒3.6%

4.欠損金の繰越控除制度の控除限度額の縮小

大法人の控除限度額が次のように改正されます。
平成28年度 所得金額の65%⇒60%
平成29年度 所得金額の60%⇒55%

また、繰越期間が10年となるのは、平成30年4月1日以後に延期されます。

5.地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

地域再生法の改正法の施行の日から平成32年3月31日までの間に地方創生推進寄付活用事業に関連する寄付金を支出した場合、法人税及び住民税から税額控除できる制度が創設されます。企業が寄付をした場合の、実質負担が最低で約40%程度で済むこととなります。

6.交際費の損金不算入制度の適用期限延長

飲食費に係る損金算入の特例と中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。


7.中小企業者等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限延長

中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までに開始する事業年度まで、中小企業者等以外の法人は、欠損金の繰戻し還付の適用ができないこととなります。


8.環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)の見直し

風力発電設備の即時償却の廃止など一定の見直しが行われた上で、環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までの間に取得した資産について適用することができます。


9.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限延長

中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例の適用期限が2年延長されます。ただし、常時使用する従業員数が1,000人を超える法人は除外となる。


10.中小企業者等の機械装置の償却資産税の特例の創設

中小企業者等が平成31年3月31日までの間に生産性向上設備のうち一定の機械装置を取得した場合、最初の3年間、課税標準に価格を1/2とする措置が創設されます。

 

平成25年税制改正大綱が公表されました

 

1月24日、自民党税制調査会は平成25年度税制改正大綱を公表しました。
今年度は「成長による富の創出」と「社会保障・税一体改革の着実な実施」の観点から、
所要の税制措置が講じられています。
今回は主な改正事項を簡単に解説します。
●会社の税金
一定の設備投資を行ったときの優遇税制(設備投資促進税制)や給与を増加させたときの
優遇税制が新たに創設されます。また、中小法人の交際費の損金算入可能額が
現行の600万円から800万円に引き上げられるとともに、控除限度額までの金額の損金
不算入措置(現行10%)が廃止されます。
●個人の税金
平成27年より、現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の
税率が設けられます。また、住宅ローン減税が平成29年まで4年間延長されます。
●相続税・贈与税
平成27年より相続税の基礎控除が引き下げられるとともに、最高税率が55%に引き上げ
られます。贈与税も税率が見直しされます。
また、新たに教育資金を贈与したときの贈与税の非課税措置が創設されます。
●その他
平成26年4月1日以後に作成された金銭または有価証券の受取書(領収証など)のうち
受取金額が5万円未満のものは印紙税が不要になります。(現行3万円未満)
この税制改正大綱はこの後、税制改正法案として取りまとめられ、国会で審議されます。
最終的に上記のとおりの改正とならない場合がありますので注意してください。

1月24日、自民党税制調査会は平成25年度税制改正大綱を公表しました。今年度は「成長による富の創出」と「社会保障・税一体改革の着実な実施」の観点から、所要の税制措置が講じられています。

今回は主な改正事項を簡単に解説します。

●会社の税金
一定の設備投資を行ったときの優遇税制(設備投資促進税制)や給与を増加させたときの優遇税制が新たに創設されます。また、中小法人の交際費の損金算入可能額が現行の600万円から800万円に引き上げられるとともに、控除限度額までの金額の損金不算入措置(現行10%)が廃止されます。

●個人の税金
平成27年より、現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の税率が設けられます。また、住宅ローン減税が平成29年まで4年間延長されます。

●相続税・贈与税
平成27年より相続税の基礎控除が引き下げられるとともに、最高税率が55%に引き上げられます。贈与税も税率が見直しされます。また、新たに教育資金を贈与したときの贈与税の非課税措置が創設されます。

●その他
平成26年4月1日以後に作成された金銭または有価証券の受取書(領収証など)のうち受取金額が5万円未満のものは印紙税が不要になります。(現行3万円未満)
この税制改正大綱はこの後、税制改正法案として取りまとめられ、国会で審議されます。

最終的に上記のとおりの改正とならない場合がありますので注意してください。

 

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