決算書で「他勘定振替高」という勘定科目を見たことはあるでしょうか?商品や材料を本来の用途(販売目的)以外で使用したときなどに使われる勘定科目です。今回は、「他勘定振替高」の使われる場面や使用方法について税理士がポイントを解説します。
他勘定振替高とは?
他勘定振替高(たかんじょうふりかえだか)とは、売上原価や当期製品製造原価から他の勘定科目へ振替をするときに用いる勘定科目で、損益計算書または製造原価報告書に表示されます。
損益計算書の売上原価の区分は通常、次のように表示されます。
期首商品棚卸高
+当期商品仕入高
-期末商品棚卸高
=売 上 原 価
つまり、期首の商品在庫に、当期中に仕入した商品を足して、期末に残った商品在庫を差し引くと売上原価となります。
しかし、例えば、商品を見本品・サンプル品として使ったり、火災や盗難で滅失してしまうなど、商品が販売目的以外で使われたり、減少したりすることも考えられます。このような場合に、特に調整がされないままだと、見本品として使った商品や火災で滅失した商品も売上原価に含まれてしまうこととなるので、正しい売上原価とはなりません。売上原価は、売上高に対応する原価が表示されるべきだからです。
だからといって、売上原価を調整するために「当期商品仕入高」や「期末商品棚卸高」の数字を直接調整すると、実際の仕入高や期末商品在り高と一致しなくなります。そこで、このようなときに用いるのが「他勘定振替高」という勘定科目です。
次のような事例で見ていきます。
期首商品 100
当期仕入 900
期末商品 150
見本品として使用 60
火災で滅失 70
上記の場合の損益計算書の表示は次のようになります。
期首商品棚卸高 100
当期商品仕入高 900
他勘定振替高 130
期末商品棚卸高 150
売 上 原 価 720
(販売費及び一般管理費)
見 本 品 費 60
(特別損失)
災 害 損 失 70
上記の事例では、実際に販売した商品の原価は720となるはずですので、売上原価は720と表示されるのが正しい状態です。そのために、見本品費60+災害損失70=130を他勘定振替高で調整をしています。このように他勘定振替高を用いて調整をすれば、売上原価を正しい表示とすることができます。
損益計算書を上記のような表示にするためには、次のような仕訳が必要となります。
(見本品費) 60 /(他勘定振替高) 60 (災害損失) 70 /(他勘定振替高) 70 |
見本品での使用や災害・盗難による滅失以外でも、棚卸資産を固定資産に振り替えたときや研究開発目的で使用したときなどでも他勘定振替高を使って調整します。
棚卸資産を固定資産に振り替えた場合の仕訳は次のようになります。
(固定資産) ××/(他勘定振替高) ×× |
商品ではなく、材料を他勘定振替高で調整する場合も考え方は同じです。材料を費消した場合は、損益計算書の売上原価ではなく、製造原価報告書の材料費の区分で他勘定振替高を用いて調整することとなります。
他勘定振替高を使うときの消費税は?
他勘定振替高は、貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書内の表示の組替のために用いられる勘定科目なので、消費税の計算には影響を与えないようにする必要があります。
そのためには借方と貸方のいずれも課税仕入とするか消費税対象外取引とするかのいずれかとなるでしょう。
商品仕入が必ずしも課税仕入かどうかはわかりませんので、どちらも課税対象外取引として仕訳を計上しておくのがわかりやすくてよいでしょう。
見本品費の事例では、次のようになります。
(見本品費-対象外―)××/(他勘定振替高-対象外-)×× |
まとめ
他勘定振替高の使い方について解説しました。他勘定振替高は売上原価や製品製造原価を正しい金額で表示するために使われる勘定科目です。しっかりと理解しておきましょう。