【仕訳解説】外貨建取引を行ったときの会計処理

輸出や輸入など外貨建てで取引を行うときもあるでしょう。そのような場合でも、会社の帳簿は円で作成しますので、外貨を円に換算しなくてはなりません。その換算の方法にもルールがあるのです。今回は外貨建取引を行ったときの会計処理に … 続きを読む 【仕訳解説】外貨建取引を行ったときの会計処理

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輸出や輸入など外貨建てで取引を行うときもあるでしょう。そのような場合でも、会社の帳簿は円で作成しますので、外貨を円に換算しなくてはなりません。その換算の方法にもルールがあるのです。今回は外貨建取引を行ったときの会計処理について、税理士がポイントを解説します。

 

外貨建取引を行ったときの仕訳は?

海外の取引先に対して、商品を販売しその代金を外貨で受け取ったり、逆に外貨建てで仕入をしたりすることがあります。このような場合でも、決算書や申告書は円貨で作成しますから、円貨に換算して会計処理をしなければなりません。

このように外貨建取引を行ったときは、原則として、外貨建取引を行ったときの為替レートを使って円換算した金額で会計処理をします。

 

外貨建売上を計上するときの仕訳

100ドルの売上を計上するとき(当日の為替レート:1ドル=110円)の仕訳は次のとおりとなります。

(借)売掛金 110,000 (貸)売上高 110,000

※1,000ドル×110円=110,000円

 

外貨建仕入を計上するときの仕訳

商品を500ドルで仕入れたとき(当日の為替レート:1ドル=115円)の仕訳は次のとおりとなります。

(借)仕入高 57,500 (貸)買掛金 57,500

※500ドル×115円=57,500円

 

外貨建取引を行ったときの為替レートはどれを使えばよい?

外貨建取引を行った場合、為替レートがわからないと会計処理ができないこととなります。この為替レートは、銀行のホームページなどでも調べることができますので、毎日メモしておく必要はありません。

 

TTS、TTB、TTMのどれを使う?

銀行ホームページで為替レートを調べると、同じ通貨でも複数のレートが表示されていることがあります。この場合、どれを使えばよいのでしょうか?

例えば、三菱UFG銀行のホームページではTTSとTTBの二つが表示されています。

この点については、税法(法人税法基本通達13の2-1-2)で、次のように決められています。

原則 電信売相場(TTS)と電信買相場(TTB)の仲値(つまりTTM)
例外(※継続適用が必要)

売上その他の収益又は資産については取引日の電信買相場(TTB)

仕入その他の費用又は負債については取引日の電信売相場(TTS)

三菱UFG銀行のようにTTSとTTBしか表示されていないときは、その平均がTTMとなります。

このように外貨建取引については、原則として、取引の都度、そのときの為替レートで円換算する必要があります。

 

簡便的な方法もある

しかし、外貨建取引が多い場合、毎日変わる為替レートを調べて換算してというのは大きな事務負担となり大変ですよね。

そのため、次のような方法で簡便的に会計処理をすることも認められています。この方法によるときも継続して適用しなければなりません。

①前月末日・前週末日または当月初日・当週初日の為替レートを用いる方法

②前月または前週といった一定期間の平均相場を用いる方法

 

②の方法による場合で、3か月ごと、半年ごと、1年ごとの平均相場を使用すると、事務処理はもっと楽になりますが、残念ながら、それは認められていません。

このときの一定期間は、「一ヶ月以内」でなければならないのです。

 

どこの金融機関の為替レートを使ってもいいの?

メインの取引金融機関が公表している為替レートを用いるのが原則です。ただし、それ以外でも、毎年同じ方法で入手した合理的な為替レートを使用することもできます。例えば、YAHOOが公表している為替レートなども合理的なものであると言えるでしょう。

 

計上後に為替レートが変動したらどうする?

掛売上を行っている場合であれば、売上計上したときの為替レートと実際に売掛金が入金されたときの為替レートが異なることがあります。

そのようなときに用いるのが「為替差損益」です。

 

先ほどの売上の事例で見てみましょう。

売上計上時は1ドル=110円でしたが、実際に売掛金が入金されたときは1ドル=120円であったとした場合、入金時には次のような仕訳を計上することとなります。

(借)預金 120,000 (貸)売掛金 110,000
     為替差益 10,000

※1,000ドル×120円=120,000円

 

売上を計上したときは円貨では110,000円であったのに、実際に入金があったのは120,000円で、売掛金計上額より多く受け取っていることとなります。

この差額の10,000円は為替相場の変動から生じた利益であり、売上ではありません。そのため、「為替差益」として計上します。この為替差益は通常は、損益計算書の営業外収益の区分に計上します。

仕入の事例では次のようになります。

仕入計上時は1ドル=115円でしたが、実際に買掛金を支払ったときは1ドル=120円であったとした場合、入金時には次のような仕訳を計上することとなります。

(借)買掛金 57,500 (貸)預金 60,000
   為替差損 2,500  

※500ドル×120円=60,000円

買掛金計上額57,500円に対して、60,000円を支払うこととなりますが、その差額2,500円は貸され相場の変動から生じた損失なので「為替損失」として計上します。

この為替差損も通常は、損益計算書の営業外費用の区分に計上されます。

 

決算期末に残った外貨建売掛金・買掛金も換算替えが必要

決算期末に外貨建の売掛金や買掛金、外貨預金、貸付金・借入金など、将来に外貨で決済される資産や負債が残っているときは、決算日時点の為替レートで換算替えをする必要があります。

100ドルの売上を計上(当日の為替レート:1ドル=110円)し、決算日まで売掛金が残っているとき(決算日の為替レート:1ドル=108円)は次のような仕訳を計上することとなります。

(借)為替差損 2,000 (貸)売掛金 2,000

 

売掛金100ドルを決算日時点の為替レート(108円)で換算すると、108,000円となります。

もともと120,000円の売掛金が計上されていたので、為替差損2,000円を計上することによって、期末の売掛金は108,000円となります。

ただし、前払金や前受金、固定資産などの資産・負債については、決算時の換算替えは行いません。

 

決算では為替差損益の相殺・純額表示が必要

最後に、期末時点で為替差益と為替差損の両方に残高が残っている場合は、為替差益と為替差損を相殺して純額で表示する必要があります。これは為替変動により受けた影響を明確に表示するためとされています。

期末における為替差益の残高が10,000円、為替差損の残高が5,000円の場合は、決算整理仕訳として次のような仕訳を計上することとなります。

(借)為替差益  5,000 (貸)為替差損  5,000

 

 

まとめ

外貨建て取引を行ったときの会計処理について解説しました。外貨建取引が多い場合は、厳密に会計処理をすると事務負担が大変です。自社にあった合理的な方法を検討し、継続して適用するとよいでしょう。

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