事業を開始し、役員や従業員に給与を支払うことになると所得税等の源泉徴収をしなければなりません。今回はこの源泉徴収について税理士がポイントを解説します。
源泉徴収とは?
会社勤めの経験がある方であれば、給与明細を思い出してください。毎月の給与から税金が引かれていることでしょう。
このように給与や配当、報酬などを支払う者(会社や個人事業主の方など)が、支払う際に、給与から所得税額を天引きして国(税務署)に納付する仕組みのことを源泉徴収といいます。
所得税は給与や報酬などを受け取った個人の方が納税するものですが、個人が納めなければならない税金を給与の支払者が代わりに納めなければならないこととされています。源泉徴収と年末調整の手続きにより、会社員の方などは確定申告をしなくても所得税等の納税が完結することとなります。
この源泉徴収をする義務は、給与や報酬を支払う者(会社や個人事業主の方)にあります。そのため、源泉徴収漏れがあった場合には不納付加算税や延滞税といったペナルティが課せられる可能性があります。たとえ、従業員などが源泉徴収を拒んだとしても、源泉徴収をしていなければペナルティを課せられるのは給与等を支払う会社や個人事業主の方となりますので注意してください。
源泉徴収の対象は?
役員や従業員に対して給与や賞与、退職金等を支払った場合には源泉徴収が必要です。
また、個人に対して原稿料や講演料、弁護士・公認会計士・司法書士等の専門家に対する報酬、外交員報酬などを支払った際にも源泉徴収が必要です。
源泉徴収の対象や源泉徴収する税額は細かく決められていますので、確認しておきましょう。
源泉所得税はいつまでに納付する必要がある?納付方法は?
原則的な納付方法
源泉徴収をした所得税等は、原則として、源泉徴収の対象となる給与や報酬を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。
納付は「所得税徴収高計算書」に支払額や源泉徴収税額等を記載し、金融機関等の窓口で行います。なお、クレジットカード納付やダイレクト納付を利用することもできます。
納期の特例
給与等の支給人員が常時10人未満である場合は、納期の特例を適用することができます。
納期の特例とは、源泉徴収税額の納付を年2回 1月と7月にそれぞれ6ヶ月分をまとめて納付することができる制度です。
毎月税額を計算して納付することは煩雑ですから、納期の特例を適用できる場合は利用するとよいでしょう。
この納期の特例をするには、事前に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しておかなければなりません。
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給与所得の源泉徴収はどうする?
毎月の給与計算ではどのようにして源泉徴収をすればよいのでしょうか?
給与等を支払うときに源泉徴収をする所得税等の額は「給与所得の源泉徴収税額表」を用いて計算します。この税額表は、毎年更新されますので、必ず対象年度のものを用いるようにしましょう。
月額表には、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額と扶養親族等の数に応じて源泉徴収税額が決められています。給与計算の際には、この表を使って、一人一人当てはまる源泉徴収税額を決定することとなります。
給与所得の源泉徴収税額表の甲欄・乙欄の違いは?
給与所得の源泉徴収税額表を見ると「甲欄」と「乙欄」に区分されています。
「甲欄」は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与について使用します。
「乙欄」はその他の人に支払う給与について使用します。
年一回、年末調整が必要。年末調整とは?
毎月の給与計算における源泉徴収税額は「給与所得の源泉徴収税額表」を使って求めますが、年に一回、通常は12月の給与計算の際に「年末調整」を行う必要があります。
「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて、1年間に給与から源泉徴収をした額は、その人が支払わなければならない所得税額とは一致しません。「給与所得の源泉徴収税額表」は扶養親族等の数で一律に決められていますが、実際に税額を確定するには扶養親族の異動、生命保険料控除、住宅ローン控除などについても考慮する必要があるためです。これらを考慮してその人の一年間の所得税等を確定させ、源泉徴収税額との差額を調整する手続きのことを「年末調整」といいます。
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まとめ
源泉徴収について解説しました。源泉徴収誤りや漏れがわかった場合、税務署からペナルティが課せられる可能性があります。給与計算をされる方は、源泉徴収の基本や流れを必ず理解しておきましょう。