これから株式会社を設立する場合、必ず取締役を決めなければなりません。この取締役はどのような役割を持つのでしょうか?取締役の人数や任期はどのようにすればよいのでしょうか?税理士がポイントを解説します。
取締役の役割を知っておこう
これから株式会社を設立する場合、会社法を守らなければなりません。この会社法で、株式会社の場合は、必ず取締役を選任しないといけないこととなっています。
では、取締役は、どのような役割を持つのでしょうか?
会社法第348条第1項によると「取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。)の業務を執行する。」とあります。
業務執行を、わかりやすくいうと、会社の資源(人、物、金)を使って、事業を行うことをいいます。つまり、取締役がいないと、事業ができない、とういことになります。
この取締役は「役員」ですから「従業員(労働者)」とは立場が異なります。まず、会社に対して、従業員よりも重い責任を負う必要があります。また、役員には給料ではなく、役員報酬を支払います。役員報酬は、税務上、その金額を自由に増やしたり減らしたりすることができないという制限がありますし、労働の対価ではありませんから、残業代なども発生しません。また、雇用保険や労災保険の対象ともなりません。
会社設立を行う場合の取締役の人数は1名以上でOK
平成18年以前、株式会社を設立する際には、取締役の人数は最低でも3名、監査役も1名以上、選任する必要がありました。しかし、平成18年5月1日に新会社法として施行されました。新会社法が施行されたことにより、取締役の人数は自由化され、1名からでも会社設立が可能になりました。また、監査役は選任しなくてもよくなりました。
従来は取締役3名、監査役1名で計4名の役員がいなければ、会社を設立できませんでしたが、会社法の施行により役員の人数については大幅に緩和され、1名以上の取締役がいれば、会社設立することができます。
もちろん、取締役や監査役の人数を増やすことは可能で、上限はありません。
では、取締役を何名にするのが適正なのでしょうか?
取締役がオーナー経営者1人であるときのメリットは、何でも自分で決めることができて、スピードを持った経営が可能になることです。その反面、会社が間違った方向に進んでいっているとしても気付かなかったり、気付いたときには手遅れになったりするようなリスクもあります。複数名が意見をしながら、会社を経営することのメリットもあるのです。取締役を何名にするのが適正なのか、というのは明確な答えがなく、どのような会社を目指していくかによっても違ってくるのです。
なお、取締役が3名以上となる場合は、取締役会を設け、重要な意思決定は取締役会ですることになります。
取締役の任期とは?任期は何年にするのがいい?
取締役や監査役には任期があり、任期が満了したら、選びなおさなければなりません。原則として、取締役の任期は2年、監査役の任期は4年ですが、株式の譲渡制限がある非公開会社の場合は、最長10年まで伸ばすことができます。この役員の任期は定款に記載します。
このように非公開会社の場合は任期を伸ばすことができますが、何年にするのがいいのでしょうか?
会社法の原則で、任期が、取締役2年、監査役4年となっているのは、取締役も監査役も会社にとってとても重要な役割を負う者なので、定期的に株主総会で株主がチェックし、選び直す方がいいからです。任期を長くすると、実績を残さない取締役も長い任期が満了するまで居座ることができます。取締役は役割が重いですから、そのような期間が長いと会社が大ダメージを受けてしまう可能性があります。中には、取締役の実績を厳しくチェックするために取締役の任期を1年に短縮しているような会社もあります。
しかし、取締役がオーナー(主要株主)でもあり、事実上、株主総会で役員を選任し直す必要がないような場合は、任期を短くして、頻繁に選任し直すのも煩雑です。重任する場合も法務局への登記申請は必要だからです。
つまり、自身がオーナー経営者となるような場合は、任期を長くしておいた方がよいでしょう。最長の10年にすれば、登記の手間もそれだけ省くことができます。ただし、10年後となると随分先になりますから、任期満了のタイミングを忘れないように注意しましょう。登記を忘れると、過料というペナルティを支払わなければならなくなります。
まとめ
株式会社の取締役について解説しました。自身がオーナー経営者である場合は、あまり難しく考える必要はありません。しかし、取締役は従業員とは違って、重い責任があり、賠償責任を負うこともあります。会社設立する前に、取締役の役割や責任をしっかりと理解しておくようにしましょう。