会社経営をするにあたって経営分析は不可欠です。経営分析をする際は経営指標を用いますが、この経営指標はたくさんあるため、どれをどのように使ったらよいかわからないことも多いでしょう。今回は会社経営するなら最低限知っておいて欲しい9個の経営指標を紹介します。
1.貸借対照表分析の主な指標
①流動比率
流動比率は、流動資産と流動負債を比較し、短期的な支払能力を判断する指標です。
流動比率=流動資産/流動負債×100
流動資産は一年以内に現金化される資産で、現金や預金、売掛金、棚卸資産などが該当します。一方、流動負債は一年以内に現金の流出もしくは費用化される負債で、未払金、買掛金、短期借入金などが該当します。流動負債の支払ができなくなると資金がショートし、経営は破綻してしまいます。流動負債を上回る流動資産を確保していることが望ましく、理想的な水準は200%以上とされています。
②当座比率
当座比率は、流動比率と同じく短期的な支払能力を判断する指標ですが、分子は当座資産を用います。
当座比率=当座資産/流動負債×100
当座資産とは、現金、預金、受取手形、売掛金、一時所有の有価証券などのことをいい、流動資産からは棚卸資産やその他の流動資産など即時に換金することが難しいものを除いたものです。即時に換金することが難しいものを除くことによって、流動比率よりも厳格に短期的な支払能力を判断することができます。
③自己資本比率
自己資本比率とは、総資産(総資本)のうち自己資本がどの程度を占めているかを表す指標で、算式は次のとおりです。
自己資本比率=自己資本/総資産(総資本)×100
自己資本は借入金などと違って返済しなくてもよいものです。総資産に占める自己資本の割合が高いほど経営が安定しているものと考えられます。自己資本比率が低いと融資を受ける際にはマイナスとなることがあります。会社規模に応じた自己資本を維持するように見ていく必要があります。
④固定長期適合比率
固定長期適合比率とは、固定資産に投資した資金がどれだけ長期資金(固定負債+自己資本)で賄われているかを示す指標です。
固定長期適合比率=固定資産/(固定負債+自己資本)×100
固定資産は長期間にわたって使用することによって収益を獲得するための資産です。そのため、固定資産を取得するときは長期資金(固定負債または自己資本)を充当しなければなりません。この指標を見ることによって、設備投資などが無理なく行われているかを判断することができます。100%以下が一つの目安で、理想的な水準は50%~80%とされています。
2.損益計算書分析の主な指標
⑤売上高増加率
前期と比べて売上高がどう変動したかを示す指標が売上高増加率です。
売上高増加率=(売上高-前期売上高)/前期売上高×100
売上高増加率が連続してプラスであれば、会社が順調に成長していることを表しています。逆に売上高増加率が連続してマイナスであれば、自社のビジネスの競争力が低下してきている可能性があります。売上高増加率はプラスを目指しましょう。
⑥売上高総利益率(粗利率)
売上高総利益率は、売上高に対して売上総利益がどれだけ占めているかを見る指標です。
製品を売ったりサービスを提供して利益を稼がないといけません。どの程度の利益を獲得できているかを示す指標が売上高総利益率です。粗利率ともいいます。
売上高総利益率=売上総利益/売上高×100
売上高総利益率は競争力や競争戦略によって変わってきます。薄利多売の戦略のときは低くなりますし、高付加価値高利益率を目指しているときは高くなります。自社の戦略どおりの利益率となっているかをチェックしましょう。どのような戦略をとるにしても、売上高総利益率が下がってきているときは、自社の製品・商品・サービスの競争力が落ちてきていることを示しています。何らかの対策が必要となるでしょう。
⑦売上高販管費比率
売上高販管費比率は、売上高に対して販管費がどれだけ占めているかを見る指標です。
売上高販管費率=販管費/売上高×100
売上高販管費率の過去3年~5年の推移をチェックするとよいでしょう。
通常は会社規模が大きくなるほど効率的に運営されていきますから、売上高販管費率は一定か減少していくことになります。もし増加傾向にあったり、思ったような数値と異なる場合は、費目別に細かくチェックしてみてください。売上高はそれほど増えていないのに、交際費や人件費が大きく増えている、ということがわかれば、経費のカットも必要です。
⑧総資産利益率(ROA:Return On Assets)
総資産利益率は、会社が持っている資産を利用して、どの程度の利益を上げているかを示す指標です。
総資産利益率(ROA)=当期純利益/総資産×100
総資産利益率は経営の効率性をチェックする指標です。たとえ、会社が利益を計上したとしても、会社の規模からすると過小となっている可能性があります。そのようなときは効率性を高める方法を考えることで、もっと稼ぐことができるようになる可能性があります。資産効率性を高める方法としては、不良資産を売却したり、陳腐化した設備を更新して生産性を高めたりすることが考えられます。
⑨自己資本利益率(ROE:Return On Equity)
自己資本利益率は、株主が拠出した資本(自己資本)を利用して、どの程度の利益を上げているかを示す指標です。
自己資本利益率(ROE)=当期純利益/自己資本×100
株主からすれば、資本(株主の出資)がうまく活用されて利益をあげているかどうかは重要です。上場会社であれば、株主が資本を効率的に活用して利益をあげていないと判断した場合は、株を売って簡単に他の会社に乗り換えられてしまいます。上場会社でなくても、資本効率は考えて経営をする必要があるでしょう。
3.まとめ
会社経営をするにあたって、最低限知っておいてほしい経営指標を9つ紹介しました。
経営指標は経営分析をするためのものですが、単に数値を出したからといって、それだけで何かがわかる訳ではありません。決算書を理解し、同業他社や自社の過去の経営指標と比べてどうなっているかを何年も継続して見ていけば、経営のヒントを与えてくれることでしょう。