会社設立前であっても、設立準備のために支出が生じることもあるでしょう。このような設立準備のための支出は会社の経費として認められるのでしょうか?税理士がポイントを解説します。
会社設立前の費用は必要経費になる?
会社設立後にすぐに事業を進めることができるように会社設立前にパソコンなどの備品を購入したり、会議を行ったりすることもあるでしょう。このように会社設立前に支出した経費も会社の費用となるのでしょうか?
会社設立前の支出であっても、事業に関連したものであれば、通常は会社設立後の会社の必要経費(費用)に計上することができます。必要経費(費用)に計上されると、会社の利益(所得)はその分減りますので、税金が少なくなります。
ただし、法人税法のルール(法人税法基本通達2-6-2)で、次のような場合は、会社の必要経費とはならないこととされています。
1.設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合における設立期間中の損益 2.個人事業を引き継いで設立される場合の、当該事業から生じる損益 |
1については、設立期間が相当程度長期になるような場合の設立期間中に発生した支出は必要経費にならないということです。「設立に通常要する期間」は明確にされていませんが、一般的に会社設立に要する期間は1~3カ月程度と考えられますから、その期間を超えている場合は注意が必要です。
また、2については、個人事業から法人成りする場合の個人事業に関連した支出は、会社の必要経費ではなく、個人事業の必要経費として計上することとなります。
なお、会社設立に要した費用で、一定のものは「開業費」または「創業費」として計上します。
会社設立前の支出も請求書や領収書を残しておこう
このように会社設立前であっても、会社設立後の会社の事業に関連したものであれば、会社設立後の会社の経費にすることができます。税金を減らすことができますので、必ず領収書を残しておきましょう。
このときの領収書の宛先は社名が決まっているときは会社名にしておくとよいでしょう。まだ社名が決まっていないときは個人名でも大丈夫です。会議費であれば、会議に参加した人の名前や会議の内容を記録しておくなど、後で支出した内容がわかるようにしておく必要があります。
「創業費」「開業費」とは?
会社設立に要した一定の費用は「創業費」や「開業費」になります。
創業費とは、会社を設立するために通常必要と認められる費用のことをいい、主に次のようなものがあります。
会社設立時の登録免許税 |
開業費とは、会社設立後、営業を開始するために特別に必要と認められる費用のことをいい、主に次のようなものがあります。
許認可取得費用 |
創業費や開業費については、一旦繰延資産として処理し、税務上は任意のタイミングで償却(費用計上)することができます。任意のタイミングで償却できる創業費や開業費をうまく活用すれば節税にもなるでしょう。
まとめ
会社設立前の支出について解説しました。ここで解説したように、原則として、会社設立前に生じた費用でも会社設立後の必要経費になります。会社設立後、すぐに営業を始めることができるように、設立期間中にしっかりと準備を進めておきましょう。