会社設立には多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。今回は会社設立のメリット・デメリットについて、税理士がポイントを解説します。
会社設立の主なメリット
会社設立の主なメリットとしては次のようなものが挙げられます。
1.会社は有限責任
個人事業では、事業で借金をすればそれはそのまま個人の借金となるので、個人資産を取り崩してでも借金を返済したりしないといけないときもあります。このため、万が一、事業に失敗した場合などは、個人の生活まで制限されてしまうことになりかねません。
しかし、株式会社や合同会社など有限責任となる会社を設立すれば、法律上は、出資者(個人)の責任と会社の責任は切り離されます。例えば、事業に失敗して会社に借金が残ったときや事故を起こして会社が損害賠償請求をされたときでも、有限責任形態の会社では、個人の出資額は返ってこなくなりますが、それ以上の債務を負うことはありません。もちろん個人保証を求められることもありますし、会社にしたからといって、個人の責任がすべて解放されるわけではありませんが、これは会社を設立する大きなメリットと言えます。
2.会社設立することで節税になる
個人が儲けた利益(所得)には『所得税』がかかります。一方、法人が儲けた利益(所得)には『法人税』がかかります。
個人の所得税は、超過累進税率といって、利益(所得)が多いほど高い税率となり、所得税の最高税率は法人税率よりも高くなっています。
つまり、利益(所得)が多いときは、会社を設立し、法人税等を支払う方が税金が少なくなります。また、法人の場合は、役員報酬について給与所得控除を受けたり、退職金を支給したりすることができるなど、個人よりも節税の選択肢は増えることとなります。多くの利益が見込まれるときは会社を設立した方がよいでしょう。
3.会社の方が外部から信用される
「○○さん」の個人事業より「株式会社○○」が行う事業の方がイメージはよいものです。一般的に大きな事業はほとんど会社で行いますし、個人事業の場合、どうしても細々と事業をしているイメージがついて回ります。
つまり、個人事業者よりも会社の方が対外的な信用力は高いと言えるでしょう。そのため融資やベンチャーキャピタルからの出資など資金調達の可能性は広がりますし、人材の獲得や取引先の拡大でも会社の方が有利となるでしょう。会社でないと株式上場もできません。
4.事業承継がスムーズに
たとえば、事業主が死亡したときなどの場合、個人事業であれば事業を構成する個々の資産などを個別に事業継承者に譲渡していくこととなります。個々に契約する必要があります、取引先などへの通知も煩雑です。しかし、会社であれば、株式を後継者に譲渡することにより円滑に事業を承継することができます。また、持株比率を調整することで、会社への関与の度合いを調整することもできます。
これは不動産オーナーでも同じことが言えます。相続の都度、所有する不動産の承継をするよりも、株式を相続する方が手続きは楽になるでしょう。
会社設立の主なデメリット
続いて、会社設立の主なデメリットを見ていきましょう。
対外的な信用力が増し、個人とは切り離された会社という存在が認められるということは、会社としてそれだけの責任を負わなければなりません。
会社設立にあたっては事務手続やコストがかかりますし、会社運営を行うにあたっては当然に会社法や関連法規を遵守することが必要となります。
会社設立の主なデメリットとしては次のようなものが挙げられます。
1.会社設立に事務手続きとコストがかかる
会社設立に要するコストは、株式会社の場合で約25万円、合同会社の場合で約6万円です。定款の作成や登記などやらなければならない事務手続も多くあります。
また、会社設立後には利益があるかどうかに係らず一定の税金(法人住民税の均等割)を支払う必要があります。
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2.経理処理に負担がかかる
正確な帳簿の作成は事業運営の前提であり、個人事業であってももちろんやっておかなければならないことですが、会社は「複式簿記」で記帳し、「貸借対照表」「損益計算書」などの決算書と税務申告書を決算の都度、税務署に提出する必要があります。
3.社会保険に強制加入しなければならない
会社を設立すると、国民年金は厚生年金に、国民健康保険は健康保険に切り替える必要があります。社長1名であっても、これらの社会保険に加入しなければなりません。
社会保険料の負担は結構大きいですから、これは会社の場合は大きな負担となります。
4.決算公告が必要となる
会社法の規定により、株式会社は、毎年会社の決算内容(貸借対照表)を外部に公表することが求められています。
まとめ
会社設立のメリット・デメリットについて解説しました。これから会社設立するならデメリットのこともよく考えておく必要があるでしょう。