平成22年度税制改正において、グループ法人税制が整備されました。これは、法制度や会計制度の定着により、分社化や完全子会社化による企業グループの形成など、企業グループの一体的な経営を展開している我が国企業の実態を踏まえ、課税の中立性や公平性を確保する観点から、新たに設けられた税制です。今回はこのグループ法人税制の整備等について解説します。
■グループ法人税制の主な内容
1.グループ内取引等に関する税制
(1)資産の譲渡取引時の課税
グループ内(100%資本関係のある国内会社間)で一定の資産の譲渡取引を行ったことにより生ずる譲渡損益について課税の繰り延べが図られ、グループ外への移転等の時に課税されることとなります。これにより課税されることなくグループ間で資産を譲渡することができ、グループ間で効率的な資産利用が可能となります。
一定の資産とは、固定資産、土地、有価証券(売買目的有価証券を除く)、金銭債権及び繰延資産で、帳簿価額が1,000万円以上の資産をいいます。
(2)受取配当の益金不算入制度
グループ内の受取配当について、負債利子控除を適用せず全額益金不算入とされます。これにより親会社による株主への配当や設備投資の原資を減少させずに済むこととなります。
(3)寄付金の取扱い
グループ内の寄付金について、支払い・受取り、いずれの側においても寄付金は、損益に不算入とされます。
2.連結納税制度の見直し
(1)連結納税承認申請期限の短縮
連結納税の承認申請書の提出期限の短縮が図られます。
現行:連結納税開始の日の6ヶ月前の日
改正:連結納税開始の日の3ヶ月前の日
(2)連結納税開始・加入前の子会社欠損金の持込制限の緩和
従来は、連結納税開始時等に子会社が持っていた欠損金は切捨てられ欠損金の繰越控除が利用できませんでしたが、以下の法人については、当該子会社の個別所得金額を限度として利用できるようになります。
(対象法人)
・親会社に5年超100%保有されている法人
・親法人又は100%子法人により設立された法人
・適格株式交換による完全子法人 等
(3)事業年度の中途で完全支配関係が生じた場合の連結納税の承認お効力発生日の特例制度
加入法人の完全支配関係が生じた日(加入日)以後最初の月次決算日の翌日を効力発生日とすることができるようになります。
(4)連結納税開始時の資産の時価評価制度
連結納税開始又は加入後2月以内に連結グループから離脱する法人の有する資産は時価評価の対象から除外することとなります。
3.グループ法人税制における中小特例の取扱い
親会社の資本金が5億円以上の場合、その100%子法人については、次の中小企業向け特例措置が適用されなくなります。
(適用されない中小企業向け特例措置)
・軽減税率
・交際費の損金算入の特例
・特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用
・貸倒引当金の法定繰入率
・欠損金の繰戻しによる還付制度
4.資本に関係する取引等に係る税制の見直し
(1)適格合併等の繰越欠損金の利用制限措置の緩和
会社設立時から継続的に特定資本関係(会社の株式を50%超保有する関係)にある法人との間で適格合併等を行った場合の、欠損金の制限措置の適用が除外されます。これによりグループ内の円滑な組織再編を行うことが可能となります。
(2)清算所得課税の廃止
清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行されます。
5.適用時期について
グループ法人税制の整備等に関する税制改正は、平成22年10月1日から適用となります。ただし、1(2)、2(2)、3については、平成22年4月1日以後に開始する事業年度より適用されます。