業績の悪化等で役員報酬を変更するときの注意点

役員報酬は原則として、年の途中で変更することができません。しかし、経営状況が悪化しているにもかかわらずそのまま役員報酬を払い続けて経営が行き詰まってしまえば元も子もありません。そのため、一定の事情がある場合には役員報酬を … 続きを読む 業績の悪化等で役員報酬を変更するときの注意点

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役員報酬は原則として、年の途中で変更することができません。しかし、経営状況が悪化しているにもかかわらずそのまま役員報酬を払い続けて経営が行き詰まってしまえば元も子もありません。そのため、一定の事情がある場合には役員報酬を変更することが認められています。

 

 

原則として、年の途中で役員報酬を変更することはできない

定期同額給与とは、通常の給与のイメージで、毎月同じ金額を支払う給与(役員報酬)のことをいいます。事業年度が始まってから3か月以内に決定し、一度決定すると、原則として、その次の事業年度の同じタイミングでないと変更することができません。

ただし、次のような場合には、役員報酬を変更することが認められています。

①役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更などがあったことにより、役員報酬の額を改定する場合(臨時改定事由)

②経営の状況が著しく悪化したことなどにより役員報酬の額を減額する場合(業績悪化改定事由)

①の臨時改定事由には、病気などによって職務が執行できなくなったような場合も含まれます。また、病気などが治癒して再び職務が執行できるようになった場合も臨時改定事由に該当します。

②業績悪化改定事由により改定する場合は、当然ですが、減額することのみが認められています。

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経営状況の悪化により役員報酬を減額する場合

業績悪化改定事由の「経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、次の場合をいいます。

経営状況が著しく悪化していること
②それによってやむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情があること

そして、これにあたるかどうかは、会社の経営上、そのような事情が客観的にあるかどうか、によって判断することとなりますが、財務諸表の数値が相当程度悪化している場合や倒産の危機に瀕している場合だけではなく、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情も含まれます。

そのため、次のような場合は、通常、業績悪化改定事由に該当し、減額改定することが認められています。

① 株主との関係上、業績等の悪化についての経営上の責任からを減額せざるを得ない場合

② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、減額せざるを得ない場合

③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

 

なお、これらの事例以外の場合でも、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるのであれば、減額改定することが認められます。

ただし、たとえ、業績、財務状況、資金繰りが悪化していたとしても、その主な目的が利益調整であるような場合は、役員報酬を減額改定することはできません。

減額改定事由により役員報酬を変更した場合に税務調査があると、『役員報酬を減額せざるを得ない客観的な事情があったかどうか』が問われることになります。そのため、そのような事情を具体的に説明できるように記録しておくようにしなければなりません。

 

 

将来の経営状況の悪化が予測されために役員報酬を減額する場合

例えば、主要な得意先が倒産したことが判明した場合や主力製品に問題があることが判明した場合など、現時点で経営状況が著しく悪化しているとは言えないが、将来、経営状況が著しく悪化することが予測されるような場合にも役員報酬を変更することはできるのでしょうか?

このように、現時点で財務的指標が悪化しているとは言えない場合であっても、役員報酬の報額などの経営改善策を行わなければ、客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避と認められる場合には業績悪化改定事由に該当することとされています。

この場合も「客観的な事情があるかどうか」がポイントです。少し売上が下がり気味だから今期の業績は悪くなりそう、などという単なる将来の見込みに過ぎない場合には、客観的な状況があるとは言えず、業績悪化改定事由には該当しません。

将来の経営状況の悪化が不可避のためにぴ役員報酬を減額する場合には、どのような客観的な事情があったのか、経営改善策を講じなかった場合のこれらの指標を改善するために具体的にどのような計画を策定したのか、といったことを説明できるようにしておく必要があります。

なお、経営改善策を講じたことによって、結果として、業績が著しく悪化することが回避できた場合であっても、業績悪化改定事由に該当します。

 

 

まとめ

役員報酬を変更することができるケースについて解説しました。このように役員報酬の変更ができる場合は限定的ですので、慎重に決定するようにしましょう。役員報酬を変更した場合、それが認められるかどうか税務調査で論点になることがあります。その場合のポイントは「客観的な事情があるかどうか」ですので、そのような事情を後で具体的に説明できるようにしておくことが大切です。