消費税軽減税率制度への対応 メニュー・料金表の表示は?

消費者に商品の販売等をする場合、その料金は税込価格で表示することが義務付けられています。では、複数税率と軽減税率の双方を取り扱う事業者の場合、どのように価格を表示すればよいのでしょうか?税理士がポイントを解説します。 & … 続きを読む 消費税軽減税率制度への対応 メニュー・料金表の表示は?

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消費者に商品の販売等をする場合、その料金は税込価格で表示することが義務付けられています。では、複数税率と軽減税率の双方を取り扱う事業者の場合、どのように価格を表示すればよいのでしょうか?税理士がポイントを解説します。

 

原則は「税込表示(総額表示)」しなければならない

消費税の総額表示義務とは?

消費者に対して商品の販売やサービスの提供を行う事業者は、原則として、消費税額(地方消費税額を含む)を含めた金額で値札やチラシなどに料金を表示しなければなりません(総額表示義務)。

 

次のように表示することが「総額表示」となります。

110円(税込)
110円(税抜価格100円)
110円(うち消費税額等10円)
110円(本体100円、消費税額等10円)

つまり、『110円』を必ず入れておかなければならない、ということですね。

税抜価格が表示されていると、消費者は自分で消費税額を計算しなければ消費税額も含めた支払総額を把握することができませんよね。それに、お店によって、税抜表示か税込表示かが統一されていないと価格の比較をすることも困難です。そのために、消費税は総額表示することが義務付けられています。

 

消費税の総額表示義務の特例

ただし、2021年3月31日までの間は、表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じている場合に限って、税抜価格を表示してもよいこととされています。

これは、2014年4月、2019年10月の2度にわたる消費税率の引上げの際の値札の張り替え等の事務負担に配慮した特例です。

「税込価格であると誤認されないための措置」には、例えば、次のような方法が考えられます。

①値札やチラシ等に次のように表示すること

100円(税抜価格)
100円(本体)
100円+税 など

 

②値札等は税抜価格で表示し、店内に別途「税抜価格であること」を明瞭に掲示すること

 

 

軽減税率と標準税率のどちらも扱う事象者はどうなる?

2019年10月1日以降は消費税の複数税率制度が導入され、8%の軽減税率と10%の標準税率の複数税率となります。軽減税率対象と標準税率対象のどちらも取扱う事業者はどのように表示すればよいのでしょうか。

①両方の税込価格を表示する方法

両方の税込価格を表示しておけば何の問題もありませんね。

例えば、次のような表示が考えられます。

(『消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について』より引用)

テイクアウト等(軽減税率)とイートイン(標準税率)が同程度の割合で利用される場合は、両方の税込価格が表示されている方が、消費者にとっての利便性は高いと言えます。

 

②どちらか片方の税込価格を表示する方法

事業者の判断により、どちらか片方の税込価格を表示することも認められています。例えば、テイクアウト等(軽減税率)とイートイン(標準税率)のいずれかの利用割合が高い場合に、その利用割合が高い方の税込価格を表示する場合が考えられます。

次のような表示です。

(『消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について』より引用)

イートインよりも低くなるテイクアウト等の税込価格のみを表示する場合は、イートインで利用する消費者が実施の価格よりも安いと誤認しないようにしなければなりません。利用方法が異なる場合には、別の税込価格となるという注意喚起を表示するようにしましょう。

なお、イートインスペースのある小売店等が顧客の意思確認のために「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」と掲示している場合などでは、意思確認の掲示と併せて「異なる税率が適用される旨」を掲示することができます。

 

③税込価格を統一する方法

テイクアウト等の場合の税抜価格を上げる、あるいは、イートインの場合の税抜価格を下げることにより、税込価格を統一することが考えられます。

例えば、次のように価格設定することが考えられます。

テイクアウト等 税込価格110円(税抜価格102円、消費税額8円)
イートイン   税込価格110円(税抜価格100円、消費税額10円)

 

事業者がどのような価格設定をするかは任意ですから、このような方法も認められています。

テイクアウト等の税抜価格を上げる場合には、配送料や容器包装等のコストを上乗せすることが考えられます。また、イートインの税抜価格を下げる場合には、イートインの需要を喚起するために値下げすることが考えられます。

従業員教育の簡素化を図ったり、お客様にわかりやすくするためには、この税込価格を統一する方法が最もよいのではないでしょうか。

なお、イートインの場合の税抜価格を下げる場合であっても、「消費税は8%しか頂きません。」というような表示は、事実ではないため、禁止されています。

(関連記事)消費税率引上げと軽減税率制度の導入に備えよう!

 

まとめ

消費税の複数税率制度が導入された場合の価格の表示方法について解説しました。解説したようにいくつかの方法が考えられます。トラブル等を防止するためにも、その中から、消費者に一番よいと思われる方法を選択する必要があるでしょう。