「特別償却」と「税額控除」の違い。どちらを選択する方が有利?

設備投資をしたときに適用することができる法人税等の特例で「特別償却」や「税額控除」といった特典が設けられていることがあります。この「特別償却」「税額控除」とはどのような制度なのでしょうか?どちらを選択する方が有利なのでし … 続きを読む 「特別償却」と「税額控除」の違い。どちらを選択する方が有利?

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設備投資をしたときに適用することができる法人税等の特例で「特別償却」や「税額控除」といった特典が設けられていることがあります。この「特別償却」「税額控除」とはどのような制度なのでしょうか?どちらを選択する方が有利なのでしょうか?税理士がポイントを解説します。

 

特別償却とは?

特別償却とは、簡単に言うと減価償却費の上乗せです。特別償却を行うと、その分、課税所得が少なくなり、法人税等の額が少なくなります。

 

事例で見ていきましょう

(例)次の機械装置を取得した場合

・取得価額1,000万円
・法定耐用年数8年(定率法:償却率0.250)、当期は12カ月償却
・30%の特別償却の対象

 

【初年度の償却限度額】

 1,000万円×0.250+1,000万円×30%=550万円

 

【2年目の償却限度額】

 (1,000万円-550万円)×0.250=112.5万円

 

初年度の償却限度額は増え、初年度の課税所得は少なくなります。ただし、その分、2年目以降の償却限度額は減り、耐用年数の8年を通じた経費に計上できる金額の合計は1,000万円で変わりません。なお、特別償却割合は、特例によって異なります。

 

 

税額控除とは?

税額控除とは、法人税等(税額控除前)から直接、一定額を控除することができる制度です。

 

(例)次の機械装置を取得した場合

・取得価額1,000万円
・法定耐用年数8年(定率法:償却率0.250)、当期は12カ月償却
・7%の税額控除の対象

 

【初年度の償却限度額】

 1,000万円×0.250=250万円

 初年度の償却限度額は変わりませんが、それとは別枠で、次の金額を法人税等から控除することができます。

  1,000万円×7%=70万円

 税額控除前の法人税等が400万円とすると、そこから70万円を控除した330万円が最終的に法人税等として納める金額となります。

 ただし、税額控除ができるのは、特例によって法人税の20%までといった上限が設けられていることもありますので、注意しましょう。なお、税額控除できる割合は、特例によって異なります。

 

 

特別償却と税額控除はどちらを選択した方が有利?

特別償却と税額控除は重複適用できないため、どちらかを選択して適用することとなります。特別償却は、初年度の減価償却費が増えることになるため、初年度は法人税等の額が少なくなります。一方で、次年度以降の減価償却費は少なくなり、その減価償却資産の償却年数を通じた期間での減価償却費は、特別償却をしなかった場合と比べて変わりません。

つまり、毎期一定の利益が出ている状況では課税の繰り延べ(税金の先送り)に過ぎず、初年度の税金は減るが、トータルで見るとそれほど変わらない、という結果となります。

税額控除は、減価償却費とは別枠で、初年度に法人税等から直接、一定額を控除することができます。減価償却は通常どおり行うことができますので、税額控除を使わなかった時と比べて、初年度で控除できた税金の分、トータルでの税金は少なくなります。

「将来業績が悪くなる可能性があるので少しでも早く減価償却を進めておきたい」「投資をするために税負担を抑えて資金を残しておきたい」などであれば「特別償却」を選択するとよいでしょう。一方で、毎期安定して利益を計上している状況であれば、トータルの税金が少なくなる「税額控除」を選択するとよいのではないでしょうか。

なお、特別償却割合や税額控除割合は特例によって異なりますし、資本金の額などによる制限もあります。それぞれの特例をよく調べて、より有利な方を選択するようにしましょう。

 

 

まとめ

「特別償却」と「税額控除」の違いについて解説しました。それぞれメリットとデメリットがあり、翌期以降の課税所得の見込みによってどちらを選択した方が有利かは変わってきますので、それらを考慮して選択するようにしましょう。「特別償却」や「税額控除」は特例ですので、適用を忘れて申告をしたときは、原則として、後から更正の請求などで適用することはできません。忘れないようにしましょう。