2019年(令和元年)分の年末調整を行う時期となりました。2019年(令和元年)分の年末調整の注意点などについて解説します。
年末調整とは?
「年末調整」とは、会社などの源泉徴収義務者が、役員・従業員などの給与所得者一人一人について、給料や賞与などの支払いの際に天引き(源泉徴収)した所得税額等と、その年(1月~12月)の収入や控除から計算した正規の所得税額等とを比較して、その過不足を調整する手続きのことをいいます。
2018年より、会社などの源泉徴収義務者は、年末調整の際に、従業員等から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」の3つの書類を提出してもらう必要があります。また、年末調整で住宅ローン控除の適用する場合は「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を提出してもらうことが必要です。
●各申告書で適用を受けることができる控除
申告書 | 控除 |
給与所得者の扶養親族等(異動)申告書 | 扶養控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除、基礎控除 |
給与所得者の配偶者控除等申告書 | 配偶者控除、配偶者特別控除 |
給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(申告分)、小規模企業共済等掛金控除(申告分) |
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | (特定増改築等)住宅借入金等特別控除 |
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2019年(令和元年)分の年末調整の主な注意点
「令和2年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の様式や記載方法に大きな変更があります。
①配偶者や扶養親族等の所得金額要件が変更されています
令和2年分の所得税より、同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者、配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生の合計所得金額の要件がそれぞれ10万円引き上げられ、次のようになります。
扶養親族等の区分 | 合計所得金額要件(改正後) |
同一生計配偶者 | 48万円以下 |
扶養親族 | 48万円以下 |
源泉控除対象配偶者 | 95万円以下 |
配偶者特別控除の対象となる配偶者 |
48万円超133万円以下 |
勤労学生 | 75万円以下 |
②所得金額調整控除が創設されます
令和2年分以降、給与等の収入金額が850万円超の者の給与所得控除が引き下げられたことに代わる措置として、所得金額調整控除が設けられました。
次の要件に該当する者は、給与所得の金額から所得金額調整控除を受けることができます。
●所得金額調整控除の対象となる者
その年の給与等の収入金額が850万円超の者で、次のいずれかの要件に該当する者
イ 特別障害者に該当する者 |
●所得金額調整控除の額
所得金額調整控除の額=(給与等の収入金額※-850万円)×10% |
※給与等の収入金額が1,000万円超の場合は、1,000万円が上限
源泉控除配偶者の要件の一つに「所得の見積額が900万円以下であること」がありますが、この所得金額調整控除の対象となるかどうかで、900万円に当たる給与等の収入金額が変わってきますので注意してください。
③住民税に関する事項に「単身児童扶養者」の欄が追加されています
単身児童扶養者とは、児童扶養手当の支給を受けている児童(所得の見積額が48万円以下の者に限る)と生計を一にする父または母で、婚姻をしていない者または配偶者の生死が明らかでない者のことを言います。なお、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合は、該当しません。
要件がややこしいですが、簡単に言うと、児童扶養手当の支給を受けている「ひとり親」の場合は、単身児童扶養者の欄にチェックを付し、必要事項を記入する必要があります。
まとめ
近年の税制改正により、特に令和2年以降は源泉徴収事務、年末調整事務がとても複雑になり、誤りやすいポイントもたくさんあります。各種申告書の記入も複雑となり、従業員などから質問を受ける可能性もありますので、年末調整事務の担当の方は改正点を理解しておきましょう。
なお、令和2年10月以降の年末調整では、年末調整手続の電子化も図られる予定です。