給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供とは?

給与所得の源泉徴収票等は一定の要件を満たした場合、電子メール等での方法で電子交付することができます。今回は給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)について解説します。   源泉徴収票等の電子交付 … 続きを読む 給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供とは?

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給与所得の源泉徴収票等は一定の要件を満たした場合、電子メール等での方法で電子交付することができます。今回は給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)について解説します。

 

源泉徴収票等の電子交付制度の概要

源泉徴収票等は書面で交付するのが原則ですが、受給者からあらかじめ電子交付の同意を得ている場合には、給与所得の源泉徴収票や給与等の支払明細書等を電子交付(電磁的方法による提供)することができます。

 

電子交付の対象となる書類は次のとおりです。

給与所得の源泉徴収票、給与等の支払明細書

退職所得の源泉徴収票、退職手当等の支払明細書

公的年金等の源泉徴収票、公的年金等の支払明細書

オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書

配当等とみなす金額に関する支払調書

上場株式配当等の支払通知書

特定口座年間取引報告書

特定割引債の償還金の支払通知書

未成年者口座年間取引報告書(契約不履行等事由が生じた場合に限る)

 

なお、給与所得の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票、公的年金等の源泉徴収票を電子交付する場合は、摘要欄に「電子交付」と表示して電子交付であることをわかるようにしておく必要があります。

 

源泉徴収票等を電子交付するメリット

源泉徴収票等の電子交付には次のようなメリットがあります。

 

メリット1:コストカットできる

書面で交付する場合には、印刷費用、封筒の購入費用、送付費用(郵送等の場合)がかかりますが、電子交付の場合はこれらのコストが不要となり、コストカットを図ることができます。

 

メリット2:事務負担を削減できる

書面で交付する場合には、印刷、封入、送付のための事務負担がかかりますが、電子交付の場合はこれらの事務負担の必要がなくなります。

 

メリット3:受給者が紛失することがなくなる

受給者(電子交付を受ける者)にとっては、紛失等のリスクがなくなります。また、データが残るため、過去分が必要となった場合も探しやすくなります。

これは交付者側にとっても再交付の手続きの必要がなくなります。

 

メリットが大きい一方、受給者も自身で印刷すれば書面交付と同様の書類を用意できるため、大きなデメリットはないとも言えます。

 

源泉徴収票等を電子交付するために必要な要件

源泉徴収票等を電子交付するためには次の要件を満たす必要があります。

 

要件①:事前承諾を得ていること

あらかじめ電磁的交付の種類と方法を示し、電磁的方法または書面で承諾を得ておく必要があります。一度、同意を得た場合は、電子交付を都度承諾を得る必要はありません。

 

要件②:電子交付の方法が一定の要件を満たすこと

次の要件を満たした形で電子交付をする必要があります。

イ)パソコン等で表示や書面への出力ができること

ロ)電子交付したことを通知すること(直接送信する場合や記録媒体を交付する場合は除く)

 

なお、受給者が希望する場合には書面で交付する必要があります。また、一旦承諾を得た場合でも、書面交付への変更を希望した場合には、それ以後は書面で交付しなければなりません。

 

源泉徴収票等の電子交付の方法

源泉徴収票等の電子交付の方法には次のような方法があります。

 

①電子メールを利用する方法

源泉徴収票等を電子メールで直接送付する方法です。

 

②社内LAN・WANやインターネット等を利用して閲覧に供する方法

源泉徴収票等のデータをインターネット上にアップし、受給者がアクセスして、閲覧する方法です。

 

③CD等の媒体に記録して交付する方法

源泉徴収票等のデータをCD等の媒体に記録して、受給者に交付する方法です。

 

電子交付する場合に、データを改変できないようにする措置を講じることまでは求められていませんが、データの真実性を担保するため、電子署名を付し電子証明書を添付するなどしておくことが望まれます。

 

源泉徴収票等を電子交付の事前承諾を得るときの注意点

事前承諾を得る際の書式については特に決められたものはありませんが、次の事項について示した上で、受給者から「電子交付を承諾する旨、承諾日、氏名」などを記入してもらうことが考えられます。

 

①電子交付する書類の名称(給与所得の源泉徴収票、給与等の支払明細書の別等)

②電磁的方法の種類やその具体的な方法

③受信者ファイルへの記録方法(XML形式、PDF形式、暗号化して受信者ファイルに記録する旨及びその復号化方法等)

④交付予定日(毎年○月○日までに交付、給与支給日に交付等)

⑤交付開始日

⑥その他参考となる事項

 

なお、2023年(令和5年)度税制改正により、「給与所得の源泉徴収票」及び「給与等の支払明細書」については、電子交付の承諾を得ようとする際に、「回答期限内に回答がないときは承諾があったものとみなす」旨の通知を行っていた場合には、回答がなくても電子交付の承諾があったものとみなされることとなります。回答期限について、「何週間」といった決まりはなく、受給者の方の勤務状況等を考慮し、回答に必要な期間を見積もった上で設定すればよいこととされています。

 

まとめ

給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供について解説しました。紙媒体での交付は手間がかかるもの。電子交付の方法によることによってコストや事務負担を削減することが可能になります。制度を理解して、活用するとよいでしょう。