法人が仮想通貨取引を行うときの税金・注意点

2019年度税制改正において、法人が期末に保有する仮想通貨の評価方法や仮想通貨を譲渡した場合の譲渡損益の算出方法等の見直しが行われ、原則として、法人は仮想通貨を時価評価しなければならないこととされました。今回は、法人の仮 … 続きを読む 法人が仮想通貨取引を行うときの税金・注意点

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2019年度税制改正において、法人が期末に保有する仮想通貨の評価方法や仮想通貨を譲渡した場合の譲渡損益の算出方法等の見直しが行われ、原則として、法人は仮想通貨を時価評価しなければならないこととされました。今回は、法人の仮想通貨に係る税制について税理士がポイントを解説します。

 

法人が仮想通貨を譲渡したとき

法人が仮想通貨の譲渡をした場合の譲渡損益は、一定の場合を除き、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の益金の額または損金の額に算入することとなります。

 

仮想通貨の譲渡原価は次のいずれかの方法で算出します。

①移動平均法による原価法

②総平均法による原価法

 

なお、法定算出方法は移動平均法による原価法とされています。そのため、総平均法を採用するためには、確定申告書の提出期限までに、税務署に対して届出を提出する必要があります。

 

期末に保有する仮想通貨の評価損益

法人が事業年度末に有する仮想通貨については、『活発な市場が存在する仮想通貨かどうか』によって評価方法が異なり、次のようになります。

 

活発な市場が存在する仮想通貨 評価額は時価法により評価した金額とし、評価損益をその事業年度の益金の額または損金の額に算入
活発な市場が存在しない仮想通貨 評価額は原価法により評価するため、評価損益は生じない。

 

なお、仮想通貨を時価評価した場合は、翌事業年度に洗替処理を行うこととなります。

 

活発な市場が存在する仮想通貨とは、次のすべての要件に該当する仮想通貨のことをいいます。(法61②、法令118の7)。

イ 継続的に売買価格等の公表がされ、かつ、その公表がされる売買価格等がその仮想通貨の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。

ロ 継続的に上記イの売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。

ハ 次の要件のいずれかに該当すること。

(イ) 上記イの売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。

(ロ) 上記ロの取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。

 

少しややこしいですが、日本にある仮想通貨取引所や仮想通貨販売所が取り扱っている仮想通貨については、基本的には「活発な市場が存在する仮想通貨」となるでしょう。

 

法人が仮想通貨信用取引を行っているとき

法人が仮想通貨信用取引を行っている場合、事業年度末に未決済の仮想通貨信用取引が残ることがあります。

この場合、未決済の仮想通貨信用取引は、事業年度末に決済したものとみなして計算した利益や損失に相当する金額(みなし決済損益額)をその事業年度の益金の額または損金の額に算入します。つまり、未決済の仮想通貨信用取引についても時価評価をする必要があります。

なお、みなし決済損益額は、翌事業年度に洗替処理を行うこととなります。

 

仮想通貨の改正はいつから適用される?

仮想通貨に関するこれらの取扱いは、2019 年4月1日以後に終了する事業年度の所得に対する法人税について適用されます。

ただし、2019年4月1日以前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度については、期末に保有する仮想通貨の時価評価と仮想通貨信用取引を行っている場合のみなし決済損益の認識(信用取引の時価評価)は適用しなくてもよいこととされています。

 

法人が仮想通貨取引を行うときの注意点

このように法人は、仮想通貨を時価評価しなければならない点に注意が必要です。

例えば、仮想通貨が値上がりして、含み益が出ているような場合には、その含み益を認識し、法人税等を支払う必要があります。しかし、実際に売却していないのであれば、法人税等を支払う資金がありませんから、法人税等を支払うことができません。

仮想通貨は、相場が安定せず、相場が急騰したり、急落したりすることもあります。法人で仮想通貨取引を行う場合には、このように時価評価することによって納税資金が必要となる可能性があることを理解しておきましょう。

 

まとめ

法人が期末に保有する仮想通貨の評価方法や仮想通貨を譲渡した場合の譲渡損益の算出方法等について解説しました。個人は時価評価する必要はありませんが、法人は時価評価が必要です。時価評価をしなければならないというのは、取引を行う上では大きなデメリットとなるでしょう。