法人税等については以前からe-Taxを利用して電子申告することができますが、電子申告をするかどうかは任意に選択することができました。しかし、平成30年度税制改正により、大法人については電子申告をすることが義務化されることとなりました。
大法人の電子申告の義務化とは?いつから適用される?
2020年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)より、大法人が法人税や消費税の確定申告書、中間(予定)申告書、修正申告書等を提出する際には、電子申告(e-Tax)によることが義務付けられます。地方税の法人住民税及び法人事業税についても同様です。
義務化の対象となる書類は申告書及び申告書に添付するすべての書類です。
なお、修正申告の場合は、 2020年4月1日以後に開始する事業年度の修正申告から電子申告の義務化の対象となります。
電子申告が義務化される大法人とは?
電子申告の義務化の対象となる大法人とは次の法人等のことをいいます。
①事業年度開始時点の資本金の額(または出資金の額)が1億円超の内国法人
②相互会社、投資法人、特定目的会社
③国・地方公共団体(消費税及び地方消費税の場合)
資本金等の額ではなく、資本金の額で判定するのがポイントです。また、資本金の額等による判定は、課税期間の特例を受けている法人の消費税申告についても、「事業年度開始時点」で判定します。
電子申告が義務化された場合の注意点
電子申告義務化適用届出書の提出が必要
電子申告の義務化の対象となった法人は、対象事業年度開始の日から1か月以内に「電子申告義務化適用届出書」を所轄税務署長に対して提出することが必要です。これまでに電子申告をしている場合でも、この届出を提出しなければなりません。
義務化以降に書面で提出した申告書は無効になる
2020年4月1日以後に開始する事業年度で、電子申告の義務化の対象法人が、電子申告をせず、従来どおりの書面で申告書を提出した場合、書面で提出した申告書は無効となります。法定申告期限内に書面で提出したとしてもそれは無効となり、法定申告期限後に電子申告をした場合には、無申告加算税の対象となりますので注意してください。また、2期連続して法定申告期限内に申告をしなかったときは、青色申告の承認の取消対象となることがあります。
添付書類を含めてすべて電子申告する必要がある
電子申告の義務化以降は、提出が必要な申告書及び申告書に添付するすべての書類について電子申告をする必要があります。使用している税務申告ソフトが対応していない別表等がある場合は、国税庁が提供するe-Taxソフトを利用するか、イメージデータで添付するなどしなければなりません。書面で提出した場合は、それが無効となり、特例等の適用に影響する可能性もありますので注意しなければなりません。
電子申告できないときはどうなる?
災害等の止むを得ない理由があって、法定申告期限までに電子申告をすることが困難なときは、「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書」を所轄税務署長に提出し、承認を得ることにより、書面での申告書の提出が例外的に認められます。
災害その他の理由には、サーバー攻撃や停電等によってインターネット環境に障害が発生した場合や経営成績の悪化等によってインターネットの利用契約を解除した場合なども含まれます。
電子申告義務化にあわせて行われる利便性向上のための改正
電子申告義務化とともに、次のような利便性を向上させるための改正が行われます。
・勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化が行われます。また、イメージデータで送信した添付書類については一定の要件のもとに、紙原本で保存する必要がなくなります。
・法人税申告書別表(明細記載を要する部分)・財務諸表・勘定科目内訳明細書をCSV形式で提出することができるようになります。
・法人税及び地方法人税の申告書にある経理責任者の自署押印欄が廃止されます。
・代表者の電子委任状を添付した場合には、委任を受けたその法人の役員や従業員の電子署名を付けて電子申告することができるようになります。
まとめ
大法人の電子申告の義務化について解説しました。義務化以降に書面で提出した申告書は無効になってしまい、ペナルティが課される可能性もあるため、自社が義務化の対象かどうか、いつから適用されるかについては必ず事前に理解するようにしておきましょう。