電子帳簿保存法のことはご存じですか?税金に関する書類は、印刷して紙で保管することが原則ですが、この電子帳簿保存法が定めるルールを満たしている場合には、電子データで保存することが認められています。今回は、電子帳簿保存法の概要やメリット・デメリット、注意点をわかりやすく解説します。
電子帳簿保存法とは?概要やメリット・デメリット
電子帳簿保存法の概要
「帳簿」(総勘定元帳、仕訳帳など)や「書類」(請求書、領収書など)といった国税関係書類は紙で保存することが原則とされていますが、一定の要件の下に電子データで保存することが認められています。この電子データで保存するときのルールを定めているのが電子帳簿保存法です。
電子データは比較的容易に改ざんができてしまいます。そのため、改ざんなどを防ぐためのルールが設けられているのです。
なお、税制改正によって、要件は緩和されていっており、年々使いやすいものになってきています。
電子帳簿保存法の対象
電子帳簿保存法の対象は次の帳簿書類です。
帳簿 | 総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など |
書類 | 棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など |
電子データで保存する方法
電子帳簿保存法で認められている電子データの保存方法は次のとおりです。
①電子帳簿等保存
PC等で作成した帳簿や書類をそのまま電子データで保存する方法です。手書きで作成している場合などはこの電子帳簿等保存をすることはできません。
【電子帳簿等保存が可能なもの】
・総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などの帳簿
・棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの書類 ・自身が作成した注文書、契約書、領収書などの書類 |
(関連記事)電子帳簿保存法とは?(2) 2021年改正後の電子帳簿等保存をわかりやすく解説
②スキャナ保存
紙で受領した書類や作成した帳簿をスキャンして、スキャンしたデータを保存する方法です。
【スキャナ保存が可能なもの】
・棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの書類
・自身が作成した注文書、契約書、領収書などの書類 ・取引先から交付を受けた注文書、契約書、領収書などの書類 |
③電子取引
電子データで送受信した取引に関する情報をそのままデータで保存する方法です。
【電子データで保存が可能な電子取引に関する情報】
取引に関して、受領・交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などの書類に通常記載される情報 |
このように帳簿書類の種類によって可能な保存方法が異なります。また、保存方法によって異なる要件が定められています。
電子帳簿保存法のメリット・デメリット
電子帳簿保存法を利用する主なメリット・デメリットは次のとおりです。
<メリット>
①書類の保管が不要になる!
法人の場合、帳簿書類は7年間保存(繰越欠損金があるときは10年間)しておかなければなりません。事業規模が大きければ、保存しなければならない書類は膨大なものとなります。その書類のほとんどは、普段見ることがないものなので、倉庫などに保管することになるでしょう。そして、いざ必要となったときには、倉庫から取り寄せをしたりして、膨大な書類の中から探し出さないといけません。つまり、紙の書類は、見たいときにすぐに見ることができません。
これらを電子データで保存することができれば、書類の保管は不要になりますし、電子データであれば検索もスムーズにできるでしょう。
②経理業務の効率化に繋がる!
経理業務は紙が回ってくることを前提としている運用が多くテレワークが進まない要因の一つにもなっています。また、紙の書類を前提としたアナログな業務は、非効率になりがちです。ペーパーレスを前提にした経理業務の仕組みを構築すれば、効率化にも繋がりますし、テレワークも進むでしょう。
③コストカットが可能になる!
書類を紙に印刷して保管するにあたっては、用紙代、印刷代、倉庫代、それらの作業にかかる人件費と多くのコストがかかっています。電子データで保存する場合も、システム代やサーバー代、作業にかかる人件費はかかりますが、会社の状況によってはコストカットになることも多いでしょう。
④優良電子帳簿の場合は優遇措置がある!
優良電子帳簿の要件を満たす場合は、過少申告加算税が軽減される、所得税の青色申告特別控除について65万円控除(優良電子帳簿でない場合は55万円)を受けられるという優遇措置が設けられています。
<デメリット>
①電子帳簿保存法の要件を満たさなければならない
国税関係書類を電子データで保存するには、電子帳簿保存法が定める要件を満たしている必要があります。税制改正により、年々、要件は緩和されていっていますが、それでも一定の要件があり、単にデータ化して保存しておけばよい、というものではありません。
②システム投資が必要になることも!
業務の効率化を図りながら、電子データでの保存をするためには、新たにシステム投資が必要となることもあるでしょう。場合によっては、コスト高になる可能性もあります。
電子帳簿保存法の注意点
①要件を満たさなかったときのペナルティがある
電子データで保存するためには、当然電子帳簿保存法が定める要件を満たしていなければなりません。2021年税制改正では、スキャナ保存や電子取引データについて、仮想・隠蔽が行われ、所得金額が過少となっていた場合は、重加算税が10%上乗せされるペナルティが設けられました。
②税制改正で要件が変わる
電子帳簿保存法は、税制改正により、年々要件の見直しが行われています。基本的には要件が緩和される傾向にはありますが、税制改正について常に把握しておく必要があるでしょう。
まとめ
電子帳簿保存法の概要について解説しました。電子帳簿保存法には多くのメリットがありますが、利用する場合は定められている要件を満たす必要があります。