法人に利益(所得)が出たときに発生する主な税金には法人税、法人住民税、法人事業税があります。このうち、法人税や法人事業税は、法人の所得に応じて加算されるものですが、法人住民税は均等割がある分、少し計算が複雑で、赤字の場合でも税金がかかることとなります。今回は、法人住民税はどのように課税されるものなのか、内容と計算方法をご紹介します。
法人住民税とは?
法人住民税とは、会社などの法人の他、財団や社団など収益事業を行うものに課せられる地方税で、都道府県民税、市町村民税に分けることができます。
住民税は都道府県や市町村に住んでいる個人に対してもかかってくる税金ですが、この個人住民税の法人版と考えると分かりやすいかもしれません。
納税義務のある会社は?
法人住民税は、都道府県あるいは市町村に事業所または事務所を置いている企業が対象になります。本社でなく支店であっても同様です。
支店登記しているかどうかにかかわらず、事業に継続性があるか、人的設備、または物的設備があるかが、納税義務があるかどうかの判断材料となります。そのため、例えば、作業スペースを借りたりしている場合でも納税義務の対象となる可能性があります。
法人住民税の法人税割と均等割とは?
法人住民税には法人税割と均等割があります。
法人税割とは?
法人税割とは、法人税の金額に対して課される法人住民税のことです。
地方自治体によって法人税割の税率が決められており、一律の割合にしている地方自治体もあれば、資本金や所得(利益)に応じて割合を変える地方自治体もあります。
事務所や事業所が複数の地方自治体にある場合は、従業員数等を基準にして、法人税の金額を地方自治体毎に分割し、分割された金額を基に、その地方自治体に支払う法人税割の金額を計算することとなりあます。
なお、決算が赤字となった場合は、通常、法人税がゼロとなるため、法人税に対して課せられる法人税割もゼロとなります。
均等割とは?
均等割とは、法人住民税の対象となる法人や財団、社団などが均等に支払わなくてはならない法人住民税のことです。
一般の法人の場合は、資本金等の額と従業員の数によって均等割の税額が変わってきます。
この均等割は、対象となる法人であれば支払わなければならないものなので、決算が赤字となった場合でも支払う必要があります。
法人住民税の法人税割と均等割の計算のしかた
実際、法人住民税はどのように計算するのか、法人税割、均等割それぞれの計算の計算について例を交えて解説します。
法人税割の計算のしかた
法人税割は、法人所得の10.0~20.0%程度の地方が多いです。
今回は、法人県民税率5% 法人市民税率12%と仮定して、所得1,000万円の場合で法人税割の計算のしかたを確認してみましょう。
・単独法人の場合
法人県民税 100万円 × 5% = 5万円
法人市民税 100万円 × 12% = 12万円
法人住民税合計 5万円 + 12万円 = 17万円
・分割法人税の場合 (従業員100人に対し、事業所の人数10人)
法人県民税 100万円 × 10/100 × 5% =5千円
法人市民税 100万円 × 10/100 × 12% =1.2万円
法人住民税合計 5千円 + 1.2万円 = 1.7万円
分割法人の場合は人数に応じての計算になるため、実際の人数と従業員全体の人数が重要になります。
分割法人の場合は、事業所のある地方ごとに計算するため、事業所のある場所によっては単独法人の合計額よりも、全体の合計額が上がることもあれば、下がることもあります。
(参考)
大阪府の法人府民税法人税割
2019/10/1以後開始事業年度 | 2019/9/30以前開始事業年度 | ||
超過 | 不均一 | 超過 | 不均一 |
2.0 | 1.0 | 4.2 | 3.2 |
不均一課税の税率は、資本金の額が1億円以下、かつ、分割前の課税標準となる法人税額が年2,000万円以下の法人が適用され、それ以外の法人は超過税率が適用されます。
大阪市の法人市民税均等割
2019/10/1以後開始事業年度 | 2019/9/30以前開始事業年度 | ||
超過 | 不均一 | 超過 | 不均一 |
8.2 | 6.0 | 11.9 | 9.7 |
不均一課税の税率は、資本金の額が1億円以下、かつ、分割前の課税標準となる法人税額が年2,000万円以下の法人が適用され、それ以外の法人は超過税率が適用されます。
※申告する際は最新の税率を必ず確認してください。
均等割の計算のしかた
均等割については、資本金等の額と従業員数によってすでに税額が決まっているため、所得割のような計算はありません。なお、会社設立事業年度などその年度が12カ月でない場合は、月割りで計算します。
ここで注意しなければならないのは、判断基準は、資本金ではなく、資本金等であるということです。資本金等の額には、資本金の他にも、資本準備金などが含まれます。
また、資本金等の額が、資本金と資本準備金の合計よりも少ない場合は、資本金と資本準備金の合計額で判定することとなる点にも注意してください。
(参考)
大阪府の法人府民税均等割
2019/3/31以前開始事業年度 | |
資本金等の額が1千万円以下である法人など | 20,000円 |
資本金等の額が1千万円を超え1億円以下の法人 | 75,000円 |
資本金等の額が1億円を超え10億円以下の法人 | 260,000円 |
資本金等の額が10億円を超え50億円以下の法人 | 1,080,000円 |
資本金等の額が50億円を超える法人 | 1,600,000円 |
大阪市の法人市民税均等割
税額(年額) | |
資本金等の額が1千万円以下である法人 | (50人以下)50,000円 (50人超)120,000円 |
資本金等の額が1千万円を超え1億円以下の法人 | (50人以下)130,000円 (50人超)150,000円 |
資本金等の額が1億円を超え10億円以下の法人 | (50人以下)160,000円 (50人超)400,000円 |
資本金等の額が10億円を超え50億円以下の法人 | (50人以下)410,000円 (50人超)1,750,000円 |
資本金等の額が50億円を超える法人 | (50人以下)410,000円 (50人超)3,000,000円 |
人数は従業者の数の合計数で判定します。
※申告する際は最新の税率を必ず確認してください。
まとめ
法人住民税は、法人税割と均等割の2つの計算で出された税額が合算されたものなので、少し複雑な印象も受けますが、計算自体はシンプルです。
ただし、税率や税額が地方自治体によって異なるため、税金の申告にあたっては必ず地方自治体のホームページなどで最新の税率や税額を確認するようにしましょう。