個人の方が不動産を売却したときは、譲渡所得税等がかかる場合とかからない場合があります。どのような場合にどれくらいの税金がかかるのでしょうか?不動産の売却を考えるなら、税金のことも理解しておきましょう。
不動産を売却して利益(譲渡所得)がでたときは所得税等がかかる
個人の方が不動産を売却して利益(譲渡所得)がでたときには所得税、復興特別所得税、住民税(譲渡所得税等)がかかります。利益(譲渡所得)がないときは、これらの税金はかかりません。
不動産の売却によって、譲渡所得がでたときは、売却した年の翌年の3月15日(土日祝の場合は翌平日)までに確定申告をして、所得税等を納めなければなりません。
なお、譲渡所得と他の所得は、原則として損益通算をすることができません。
例えば、譲渡所得がプラスで、事業所得がそれを上回るマイナスであったとしても、譲渡所得に関して計算した所得税等を納める必要があります。逆に、譲渡所得がマイナスであったとしても、給与所得等で納めた所得税等は原則として還付されることはありません(マイホームの場合など一定の特例はあり)。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、その不動産の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。
売却価格は通常は売買契約書の契約金額ですが、別に固定資産税精算金を受け取ったときは、固定資産税精算金も売却価格に含める必要がありますので、注意してください。
取得費とは、その不動産を購入したときの購入価格や購入時の諸費用のことを言います。ただし、建物の場合には、購入価格がそのまま取得費とはなりません。減価償却を考慮する必要があります。
譲渡費用は、仲介手数料、印紙代、測量費、立退料、更地にするための取壊し費用などその不動産を売却するためにかかった費用のことをいいます。
先ほど、「建物は減価償却を考慮する必要がある」と説明しました。
減価償却とは建物の経過年数に応じた価値の減少を考慮することをいいます。
つまり、建物の取得費は建物の購入価格等から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
なお、土地は、使用することによっての価値の減少はないと考えられますので、減価償却をする必要はありません。
減価償却費相当額は次のように計算します。
減価償却費相当額=建物の購入代金等×0.9×償却率×経過年数
償却率は建物の用途・構造によって次のように決められています。
(例)
2,000万円で新築し木造の建物を10年居住した後に売却した場合
2,000万円×0.9×0.031×10年=5,580,000円(減価償却費相当額)
2,000万円-558万円=1,442万円(建物の取得費)
取得費がわからないとき
ずっと以前に不動産を購入した場合や相続した場合などで、購入価格がわからない、ということもあるでしょう。このような場合には、『その不動産の売却価格の5%』を取得費(みなし取得費)とすることができます。
購入価格がわかっているときでも、取得費が『その不動産の売却価格の5%』を下回る場合には、みなし取得費を使った方が譲渡所得は少なくなります。
税率は不動産の所有期間によって異なる
先ほど計算した譲渡所得に税率を掛けた金額が所得税等の額となります。
このとき譲渡所得に掛ける税率は、その不動産を所有していた期間によって異なります。
不動産の所有期間が5年超のとき(長期譲渡所得) | 所得税・・・15% 復興特別所得税・・・0.315% 住民税・・・ 5% |
不動産の所有期間が5年以下のとき(短期譲渡所得) | 所得税・・・30% 復興特別所得税・・・0.630% 住民税・・・ 9% |
所有期間は、不動産を売却した年の1月1日時点で判断しますので注意してください。
例えば、2015年10月1日に購入した不動産を、2020年11月1日に売却したような倍では、実際の所有期間は5年超ですが、2020年1月1日時点で判断すると5年以下となるため、短期譲渡所得の高い税率が適用されることとなります。
各種特例が適用可否を検討する
個人の方が不動産を売却して利益(譲渡所得)がでたときは原則として、譲渡所得税等がかかります。ただし、一定のマイホームを売却した場合など一定の場合には特例を適用して譲渡所得から控除することができます。控除できれば、譲渡所得税等がかからなくなったり、減少したりすることとなります。
例えば、一定のマイホームを売却した場合は、譲渡所得から3,000万円を控除することができるため、譲渡所得が3,000万円までであれば譲渡所得税等はかからないこととなります。
他にも様々な特例がありますので、適用できる特例がないかどうかを必ず検討するようにしましょう。
なお、特例を適用した結果、譲渡所得税等がかからなくなる場合でも、確定申告はしなければなりません。
計画的に不動産を売却することが節税になる
ここまで説明したように、不動産を売却して譲渡所得が出るときは譲渡所得税等がかかります。短期譲渡所得の場合は約40%もの高い税率で税金がかかることとなります。
譲渡所得は損益通算することができませんが、不動産の譲渡所得同士であれば、所得を相殺することができます。
例えば、ある不動産を売却して譲渡所得(プラス)がでた年中に、他の不動産を売却して譲渡損失(マイナス)がでたら、プラスとマイナスを合算して譲渡所得を計算することができます。売却したのが別々の年であれば、合算することはできません。
このように、税金のことも考えて、計画的に不動産を売却すると、節税に繋がることがあります。
まとめ
このように不動産を売却したときの税金は、売却のタイミングや計算方法、特例を適用するかどうかによって全く変わってくることとなります。売却したときの税金の制度をしっかりと理解しておくことが節税に繋がります。