令和8年度(2026年度)税制改正で、「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」が創設されました。グループ会社間などで取引がある場合、書類の保存要件が厳格化され、対応を怠ると「青色申告の承認取消し」のリスクもある重要な改正です。 本記事では、この新しい特例の概要と実務上の対策ポイントをわかりやすく解説します。
「関連者間取引の書類保存特例」とは?
令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から親会社や子会社等の関連者との間で取引を行う場合には、「特定事項記載書類」の取得・保存が義務化されます。
いつから?誰が対象になるの?
本特例は、令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度に行う関連者間取引から適用されます。
対象となるのは、青色申告・白色申告や企業の規模を問わず、すべての内国法人が対象です。中小企業であっても例外ではありません。
「関連者」とは?どこまでの会社が含まれる?
移転価格税制とは異なり、外国法人だけでなく国内の法人も「関連者」に含まれます。
具体的には、自社との間に以下のような「特殊の関係」がある法人などが該当します。
持株関係: 親会社や子会社、兄弟会社など、50%以上の株式を保有している関係
実質的支配関係: 役員の過半数を占めている、事業資金の大部分を依存しているなどの関係
どのような取引が対象(特定取引)になる?
関連者から提供を受ける取引のうち、「販売費、一般管理費その他の費用の額の基因となるもの」に限定されます。関連者からの製品の仕入など、「売上原価」となるものは対象外です。
主な対象取引は以下の2つです。
| ・工業所有権等の譲渡・貸付け: 特許権や商標権の譲渡や使用料(ロイヤルティ)など
・一定の役務提供: 親会社が行う研究開発や広告宣伝の成果の享受、親会社システムの利用や維持管理、技術指導、マーケティング支援、会計・税務・法務支援など |
何を記載し、保存しなければならないのか?
対象となる取引について、注文書、契約書、領収書などの法人が保存義務を負う書類に、「役務提供の明細」や「対価の額の計算の明細(単価などの取引条件や計算方法など)」の記載がない場合、不足している情報(特定事項)を明らかにする「補完書類(特定事項記載書類)」を取得・作成し、起算日から7年間保存することが義務付けられます。 この補完書類は、確定申告期限までに取得等する必要があります。
万が一、保存されていない場合、青色申告の承認取消事由等に該当する恐れがあるため注意が必要です。
実務上の安心ポイントと注意点
一見すると要件が厳しく見えますが、実務上は以下の点に留意すれば柔軟に対応可能です。
金額の妥当性(他社比較)までは不要
この制度の主な目的は「実際に役務提供が行われたか」の確認と「算定根拠の把握」です。そのため、単価などの条件や期間が記載されていれば十分であり、第三者間取引と比較して「金額が適正である理由(設定理由)」まで記載する必要はありません。
複数の書類の組み合わせでOK
ひとつの契約書等にすべての事項が記載されている必要はなく、契約書や請求書など複数の書類を組み合わせて算定根拠が把握できれば、新たな補完書類の保存は不要です。
電子メール等でのやり取りも有効
単価や条件等の必要な事項をメールなどの「電子取引」で取得した場合、紙の「特定事項記載書類」を改めて取得・作成する必要はありません。電子帳簿保存法に基づいて、その電子データをそのまま保存すれば要件を満たします。
まとめ
令和8年4月の適用開始に向けて、まずは自社のグループ企業間取引(システム利用料、経営管理料、ロイヤルティなど)を洗い出しましょう。そして、現在の契約書や領収書等で「対価の額を算定するために必要な事項」が記載等されているかを確認し、不足があれば早めに書類の整備を進めることが重要です。



