日本の防衛力抜本的強化の財源を確保するため、新たな税制として導入されるのが「防衛特別法人税」です。
「また増税か……」と身構える経営者の方も多いかと思いますが、実はすべての企業が対象になるわけではありません。全法人のうち約94%は対象外になると見込まれており、焦点は「自社が課税ラインの境界線にいるかどうか」です。
本記事では、2026年4月から始まるこの新税制について、計算方法から実務上の注意点、さらには税効果会計への影響まで、経理担当者が知っておくべきポイントを凝縮して解説します。
1. いつから始まる?適用時期とスケジュール
防衛特別法人税の適用は、2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度からとなります。
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3月決算企業: 2027年(令和9年)3月期決算(2026年4月〜)から対象。
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12月決算企業: 2027年(令和9年)12月期決算(2027年1月〜)から対象。
現時点では「当分の間」の措置とされており、明確な終了時期は設定されていません。長期的なコストとして計画に組み込む必要があります。
2. いくら払う?計算方法と「500万円」の壁
防衛特別法人税は、法人税額そのものを課税標準とする「付加税」です。
基本の計算式
| 防衛特別法人税額 =(基準法人税額 – 500万円) ×4% |
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基準法人税額: 各種税額控除(試験研究費の税額控除など)を差し引いた後の法人税額です。
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基礎控除(500万円): 中小企業への配慮として、法人税額から一律500万円が控除されます。
利益水準別の納税額シミュレーション
法人税率を約23%と仮定した場合、課税されるかどうかの境界線は「年間の所得(利益)約2,200万円」です。
| 年間の所得(利益) | 概算法人税額 | 控除後対象額 | 防衛特別法人税額 |
| 2,000万円 | 約460万円 | ▲40万円 | 0円(非課税) |
| 2,500万円 | 約575万円 | 75万円 | 30,000円 |
| 1億円 | 約2,300万円 | 1,800万円 | 720,000円 |
注意ポイント:グループ法人税制
連結納税(グループ通算制度)を採用している場合、500万円の控除はグループ全体で共有します。1社ごとに500万円引けるわけではないため、子会社が多いグループは負担が増えやすくなります。
3. 税効果会計への具体的な影響
実務担当者が最も注意すべきは、「法定実効税率」の上昇に伴う会計処理です。
① 実効税率の再計算
防衛特別法人税(4%)が加わることで、法定実効税率は従来の約30.6%から0.7%〜0.8%程度上昇します。
② 繰延税金資産(DTA)の評価
防衛特別法人税の導入年度以降に解消される一時差異については、新しい高い税率を適用して繰延税金資産を計算し直す必要があります。
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影響: 税率が上がると資産計上額が増えるため、理論上は「法人税等調整額」を通じて利益が押し上げられる方向に働きます。
③ スケジューリングの複雑化
利益が2,400万円前後を推移する企業の場合、年度によって「防衛特別法人税がかかる年(高税率)」と「かからない年(低税率)」が混在することになり、税効果会計のスケジューリングが複雑になるリスクがあります。
4. 実務担当者が今すぐ準備すべきこと
制度開始まであとわずかです。以下の3点を優先的に確認しましょう。
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納税予測のシミュレーション: 直近数年の利益水準から、年間の法人税額が500万円を恒常的に超えるか確認する。
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システム改修の確認: 利用している会計・税務申告ソフトが、防衛特別法人税の別表(別表一 次葉一など)に対応する時期を確認する。
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監査法人との合意: 税効果会計における新税率の適用タイミングについて、監査法人や顧問税理士と早期に協議しておく。
まとめ
防衛特別法人税は、多くの小規模企業にとっては影響がないものの、中堅以上の企業にとっては確実な負担増と実務の複雑化をもたらします。特に税効果会計への影響は決算数値に直結するため、早めのシミュレーションが欠かせません。



