妊娠時に、妊婦が希望して母体血を用いた出生前遺伝学的検査などの出生前診断を行うことがあります。
この出生前診断にかかった費用は医療費控除の対象となるのでしょうか?
出生前診断にかかった費用は原則として医療費控除の対象とはなりません。
医療費控除の対象となる医療費は医師等の診療の対価として支払われるものに限られますが、出生前診断は胎児の染色体異常を調べるものであるなど、あくまで診断であって、治療ではありません。また、検査を行った結果、染色体異常が発見されたとしても、それが治療につながる訳ではなく、妊婦や胎児の治療に先立って行われる診療とも考えることができないものです。そのため、医療費控除の対象とはなりません。
なお、不妊治療や人工授精にかかった費用などは、医療費控除の対象となります。
治療を受けるために通院する際に、電車やバスなどの公共交通機関ではなく、自家用車で通院することもあります。
このような場合にかかったガソリン代、駐車場代などは通院費として医療費控除の対象になるのでしょうか?
このような場合のガソリン代や駐車場代は医療費控除の対象とはなりません。
医療費控除の対象となる通院費は、医師等の診療等を受けるために直接必要なもので、かつ、通常必要なものであることが必要とされています。
そして、ここでの通院費は、電車代やバス代のような人的役務の提供の対価として支出されるものをいうこととされており、通院の際のガソリン代や駐車場代はこれにはあたりません。タクシー代も通常は医療費控除の対象となる通院費にはあたりませんが、病状等からして急を要するなど止むを得ない場合に要したタクシー代については医療費控除の対象となります。
不妊治療を行ったとき、その治療にかかる費用は高額となることがあります。
一定額(年間10万円 または 総所得金額等の5%のいずれか低い方の金額)以上の医療費が生じた年は確定申告をすることにより医療費控除を受けることができますが、この不妊治療にかかる費用も医療費控除の対象となるのでしょうか?
結論を言いますと、医師の診療を受けて支払われる不妊症の治療費や人工授精をして支払った費用なども医療費控除の対象となります。
ただし、医師の診療の対価として支払われるものに限られますので、ご自身で体質改善をするために行った取組などでかかった費用を医療費控除の対象に含めることはできません。
また、一定の場合には、不妊治療に対する経済的負担の軽減を図るため、助成金を受けることができます。この助成金を受けたときは、医療費控除の適用にあたって、不妊治療に要した費用から支給を受けた助成金の金額を控除した金額が、その対象となります。
これまで、医療費控除を適用するときは、原則として、確定申告書に医療費の領収書を添付して提出する必要がありました(e-Taxによるときは記載内容を入力して送信することにより、原本の添付等は省略可)。
今回、これについての改正が行われ、平成29年分以後の確定申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合には、医療費の領収書の添付等の必要はなくなり、その代わりに医療費の明細書または医療保険者等の医療費通知書の確定申告書への添付が必要となりました。ただし、税務署長は、確定申告期限等から5年間、この明細書に係る医療費の領収書の提示や提出を求めることができますので、税務署から求められた場合には、領収書を提示するか提出しなければなりません。そのため、領収書はすぐに捨てるのではなく、一定期間保存しておかないといけません。
なお、経過措置として、平成29年分から平成31年分までの確定申告については、改正前の医療費の領収書の添付等による医療費控除を適用することもできます。
セルフメディケーション税制を適用する場合も同様で、確定申告にあたって領収書の提出は必要ない代わりに、明細書を添付する必要があります。
医療費控除では、入院や通院するときの電車代やバス代などの交通費も控除の対象となります。交通費は領収証がなくても記録があれば控除の対象とすることができますので、しっかりと記録を残しておきましょう。
●タクシー代
タクシー代は通常は医療費控除の対象とはなりません。しかし、病状からみて急を要する場合や電車・バスなどの交通機関を利用できない場合には医療費控除の対象となります。高速道路の利用料金が含まれているときはその分も対象となります。
●ガソリン代や駐車場代
ガソリン代や駐車場代は医療費控除の対象とはなりません。医療費控除の対象となる通院費は電車やバスなど人的役務の対価として支出されるものに限定されています。
●付添人の交通費
親が子の通院に付き添うなど、年齢や病状からみて、一人で通院することが危険であるときには、付添人の交通費も医療費控除の対象に含まれます。
ただし、入院している子の世話のために親が通院するような場合は、患者自身が通院していないので、そのときの交通費は医療費控除の対象とはなりません。医療費控除の対象となる医療費は、患者自身が通院するのに必要なものに限定されています。
医薬品の購入費用は、治療や療養に必要なもので、その病状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額について、医療費控除の対象となり、医師の処方や指示があることが要件とはなっていません。
そのため、かぜの治療などのために薬局や薬店などで市販されているかぜ薬(大衆薬)の購入費用は、医師の処方や指示がなくても、医療費控除の対象となります。
なお、「医薬品」とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品をいいますが、医師の処方や指示があればその医薬品が医療費控除の対象となる医薬品に該当するとは限らないので注意が必要です。
また、漢方薬やビタミン剤も治療または療養のための効能があるほか、疾病の予防や健康の増進にも効能があります。そのため、漢方薬やビタミン剤の購入費用についても、それが上記の「医薬品」に該当し、治療又は療養のために必要である場合は、医療費控除の対象となります。
医療費控除の適用を受けるときには薬局や薬店で薬を購入したときの領収書が必要となりますので、必ず入手するようにしておきましょう。
自己や自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費が一定の金額を超える場合には、一定の金額を超える部分について所得控除を受けることができます(医療費控除)。
この医療費控除の対象となる医療費の要件は、
① 自己や生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費であること。
② その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。
とされています。
上記の要件を満たすためには、医療費をその年中に現実に支払っていなければなりません。そのため、医療費の請求を受けているけれども支払っておらず未払となっている医療費は実際に支払うまでは控除の対象とはなりません。
なお、医療費をクレジットカードで支払ったような場合は、信販会社が患者に代わって医療費を立替払いしていることになりますので、信販会社に対してクレジットカード利用分の支払いが終わっていなかったとしても、その年の医療費控除に含めることとなります。
出産に関連する次のような費用は医療費控除の対象となります。
・妊娠と診断されたからの定期検診や検査などの費用
・通院に要した電車・バスなどの交通費
タクシー代は通常は医療費控除の対象とはなりません。ただし、病状からみて急を要するときや、電車・バス等の利用ができない場合には医療費控除の対象となります。電車やバスなどを利用したときは、領収書を入手できないことが多くありますが、その場合は実際にかかった費用を記録しておくことが必要です。
・病院に対して支払われる入院中の食事代(出前を取ったり外食したものは控除の対象となりません。)
なお、次のような費用は医療費控除の対象とはなりません。
・実家で出産するための帰省費用(交通費)
・入院するにあたって準備した身の回り品の購入費用
医療費控除を適用するにあたって、健康保険組合等から出産一時金等の支給を受けたときは、その金額を医療費控除の額を計算する際に医療費から差し引かなければなりません。
医療費控除の対象となる医療費は、医師等による診療または治療の対価等に限られます。
眼科医に支払う治療費等でレーシック手術やオルソケラトロジー治療を行ったときの費用について、医療費控除は適用できるのでしょうか?
レーシック手術
レーシック手術は、角膜にレーザーを照射して近視や乱視などを治療し、視力を矯正する手術で、眼の機能を医学的な方法で正常な状態に回復させるものです。そのため、レーシック手術に係る費用は、医療費控除の対象となる医療費にあたります。
オルソケラトロジー治療
オルソケラトロジー治療は、角膜を矯正して視力を回復させるための治療です。そのため、オルソケラトロジー治療に係る費用は、医療費控除の対象となる医療費となります。
なお、メガネやコンタクトレンズの購入費用は、治療をしているとはいえないので、医療費控除の対象となる医療費にはあたりません。
ご自身やご自身と生計を一にする配偶者やその他の親族のために一年間で支払った医療費が一定の金額を超える場合には、医療費控除を受けることができます。控除となるのは現実に支払った医療費のみで、未払いであるものは含まれません。
○医療費控除の対象となる金額
「実際に支払った医療費の合計額-受け取った保険金など-10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)」(最高200万円まで)
なお、控除を受けるためには確定申告をする必要があります。
○医療費控除になるもの、ならないもの
・人間ドックや健康診断の費用
疾病の治療を伴うものでないので、医療費控除の対象となりません。ただし、健康診断で重大な疾病が見つかり、その治療を行った場合などは医療費控除の対象に含まれます。
・歯を矯正するための費用
医療費控除の対象とはなりません。
・かぜ薬の購入費用
意思の処方や指示がなくても医療費控除の対象となります。医薬品に該当する漢方薬やビタミン剤の購入費用も、治療や療養に必要な場合には、医療費控除の対象となります。
・差額ベッド代
医療費控除の対象とはなりません。
・通院のための交通費
医療費控除の対象となります。